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品番がわからない場合


錦帯橋の構造的な美しさが代表する風土

錦帯橋の構造的な美しさが代表する風土
岩国の土地柄

今日はインタビューの前に作品を案内していただいて、非常に助かりました。聞きしに勝る作品で、初見の僕には驚きでした。僕自身が岩国を訪れるのが初めてということもありますが、まず岩国という土地柄について聞かせてください。

そうですね。岩国は山口県の一番広島寄りです。長州として歴史的に一時覇権を握っていた地域ですし、山口県自体がある種独特の世界観をもっていると思います。現状でいうとあまり華やかな感じのないところですね(笑)。非常に地味です。結果論でいうと行政とか官僚的な流れが非常に強い地域だということです。

外から見ていると、山口県は静かな地方という感じがします。そういう山口県を建築的な風土として見た場合、有名な建築や著名な近代建築家はいますか。

宇部に村野(藤吾)さんの「渡辺翁記念会館」がありますが、全体としてはとても少ないですね。萩には菊竹(清訓)さんの作品がありますが、現代建築でいうと大変少ないところです。淵上さんが言われた通り、静かとか、あまり特徴を感じないとか、外から見るとよくわからないところだと思います。建築の世界の歴史性とか、歴史的な文化や流れに沿うという感じとはちょっと違いますね。確かに歴史が非常に強い地域ですけれど、その歴史は官僚系の歴史です。官僚系の歴史が強いということは、華やかさに関してはほぼ無縁で、他を受け入れることにはとても消極的です。チェックして、手を出さないみたいなところがあります。

渡辺翁記念会館
(C)窪田建築アトリエ

錦帯橋

岩国徴古館

岩国城

岩国城から見下ろした城下町

獺祭

岩国と聞くと「錦帯橋」をすぐに思い浮かべるのですが、他に岩国を代表する建築や物産などはありますか。

建築ですと佐藤武夫さんの「岩国徴古館」があります。その上の山には岩国城があり、またその城下町は素晴らしいです。山口県は本土では一番西で、日本で唯一瀬戸内海と日本海に囲まれた県ですから、海産物が豊富で、貿易でいうと下関は昔から韓国との関係が深く、日本でふぐというと下関になりますね。

岩国の物産では何かありますか。

「獺祭」というお酒が世界的にメジャーになっています。「獺祭」のオーナーはパリ支店をつくったりされていて、その先人としては「ユニクロ」 も山口県なのです、岩国ではないですけれど。山口県なのにグローバルな視点で広がっていっています。地方という大きな括りの東京、大阪ではないところで、不思議とインターナショナルなところに目を向けていくというのは、逆な意味で山口の特徴かもしれません。

有名な「獺祭」が岩国だったのは僕も知りませんでした。

あまり知らないでしょう。僕は酒が飲めないので、「獺祭」が美味しいかまずいかはわからないんですけれど(笑)、つくり方はやはり特殊だと聞いてます。お酒の場合に一番重要なのは杜氏さんで、酒蔵では杜氏さんの勘と長年の歴史でお酒がつくられています。その杜氏さんは例えば夏は漁師をし、冬にはお酒をつくるために酒蔵に入ります。その職人さんたちとの関係を良い形で維持しないといいものはできません。またその職人さんたちはさらに新しい人材を育てて行かないと酒蔵を長く持続していくことができません。そういう特殊な世界で、「獺祭」はそこに目を付けて、温度管理や中身をどう反転させるかなど職人さんたちの腕にかかっていることを事前にデータとしてレシピ上にもっていけば、工場でも製作可能なのではないかというのが「獺祭」が生み出した新たな酒造りの流れで今の隆盛を生み出したそうです。



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