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品番がわからない場合


住宅デザイン・コンセプト

住宅デザイン・コンセプト
住宅にもフィットした最適化理論

「エダワカレする家」のコンセプトは家族の距離を最適化ということですが…。

住宅の設計が難しいと思うのは、自らの生活習慣が身体感覚となって現れてしまう点です。そうすると、多くのクライアントが要望するように、僕も大きなワンルームというのはキツくて、個室がほしい(笑)。一方で、大きなワンルームというのは空間体験としては情報量が増えるため豊かな体験となる。そこで、個室をちゃんとつくった上で、豊かな体験が生まれるような繋がりをつくれないかと思って、真ん中にリビング・ダイニングがあって、そこから枝分かれするように個室が出ているんですけれど、その個室の上にそれぞれの人のためのロフトを設けました。子供部屋の上には子供専用のロフトがあって、夫婦の部屋の上には夫婦専用のロフトがあって、客室には客室専用のロフトがあって、水回りにも水回りのロフトがあります。

エダワカレする家
撮影:阿野太一

それは物置なのですか。

物置だったり、子供の遊び場だったり、客室だとメゾネットで使えたり…。

余裕のスペースですね。

そうです。個室でそれぞれのプライバシーは確保されながら、その余裕のスペースであるロフトにより家族間のコミュニケーションを生み出そうと考えました。構造的には真ん中のスペースが開いていて、なおかつ柱で軸力だけ受けているので、エダワカレした4つの個室を構造的なコアとして水平力を負担させています。大きな敷地に対して、内部で枝分かれするようにスペースをつくっていくと、同時に庭もそれぞれ切り取られてできてきます。内部空間をつくりながら同時に外部空間もつくることができないかと思って設計しました。

「SI REFORM 1」は改修ですか。

はい。もともと大学の先輩であるエイトブランディングデザインの西澤(明洋)さんが、カナエルという神奈川のプロパンガス会社のためのブランディング・デザインをやっていて、その中のリフォーム部のリフォームのコンセプトが「iPDCAサイクル」というものでした。それは既存の建物を診断して、更新していくという、家のかかりつけ医のようなことをシステム化してやるということでした。それをただのリフォーム会社がやるのではなくて、そのエリアのインフラを支えている会社がやることに意味があると思いました。プロパンガスは供給できるエリアが限定されていて、ある特定のエリアをフォローするようになっているので、それが地場のお医者さんみたいなんです(笑)。ずっと面倒をみてあげるということを前提としたリフォームをやろうとしていることに対して、それに見合ったデザインをしなくてはいけないと思いました。第1号のきっかけをつくってほしいと言われて、フルリフォームできっかけをつくるんですけれど、計画を立てて更新をしていくのには、まず現状から更新をしやすい状態をつくってあげないといけない。更新していくのにベストな状態にするには、今まで新築のビルでやられている方法としてスケルトン・インフィルがあるので、それを一戸建てのリフォームでやってみたという感じです。

SI REFORM
撮影:木下昌大建築設計事務所

「SI REFORM 1」はどのような改修だったのですか。

もともとのプランと現状の住まい方が全然変わっていました。2世帯なのですが、上階に親の世代が住んでいて、下階に子供世代が住んでいました。それを上と下を逆にしたいということでした。そうすると水回りも全部逆になるんです。全部逆になるということは全部やり直すんですけれど、外周の窓の位置までやり直すと、骨だけを残してやり変えることになるんで、そこまではできない。そうすると窓の位置はいじれない。窓の位置をいじらずにプランを変えようとしても、窓の位置に左右されて間仕切りの位置を決めないといけないので、何回スタディしてももとのプランに戻るんです(笑)。考え方を変えないといけないというので、スケルトン・インフィルのインフィルを壁から離して、外周を回れるような状態にして、引き戸にして仕切ろうと、そうすれば窓にカブってもいいだろうと(笑)。

これがひとつのパターンになるのですね。

そうですね。こういうパターンがiPDCAサイクルのハード面のアイディアとしてあるんじゃないかと思ってつくりました。ひとつだけ特殊解をつくっても、その後続いていかないと思いましたから、どんなフルリフォームにもある程度採用できる考え方を提案したほうがいいと思ってやりました。

OSB合板の素材感が少し強いですが、これを使用した理由は。

安いからですね(笑)。よく構造用合板そのままというのがあるじゃないですか。構造用合板は何か塗らないとヤニが出てきちゃうんです。でもOSBの場合には木片を接着剤で固めているんで、表面がコーティングされている状態なんです。何も化粧をしなくてもそのまま仕上げになってしまうというのと、スケルトンとインフィルがわかりやすいように、ある程度主張したもののほうがいいということもありました(笑)。

「Haco」は3つの家具の機能性が素晴らしいですね。

これはもともとがリビング・ダイニングとキッチンと個室ふたつという間取りのところに、個室の数を維持したままオフィスを増やしたいという面積的には結構無茶な、要望からスタートしました(笑)。コストもそれほど潤沢ではありませんでした。またバルコニーから光と風が気持ちよく入ってくるマンションでしたけれど、もとの間取りでは、その好条件は活かせていませんでした。物も結構多くて、それらを同時に全部解決する方法はないかと考えて、収納兼キッチン兼デスクを3列つくって、そこに全部組み込もうと思いました。このように光と風が通るような方向に川の字に並べることで、キッチンとオフィスという行為のスペースが平行して並ぶので、どちらかを使っていても、どちらかを動線として使えます。ふたり暮らしなのでどちらかが埋まっていれば、どちらかを通ればいいわけです。物と行為の関係を整理し最適化すれば、すべての条件をうまくクリアできると考えました。

Haco
撮影:堀田貞雄

「タッキュウダイニング」も面白いですね。宅配便で料理が届くのかと思いました(笑)。

これはクライアントから卓球をしたいという要望があったので、卓球ダイ兼ダイニングテーブルということで作りました。ダジャレです。すいません(笑)。

タッキュウダイニング
撮影:堀田貞雄

作品名にカタカナが多いですね。何か意味があるんですか。

個人の住宅は個人名を出すのもおかしいし、そうすると建物のコンセプトを一言で表せるといいなと思っていて、そういう名前を付けています。「一橋大学空手道場」や「JFEケミカル・ケミカル研究所」などの建物に固有名詞があるものは、変に名前を付けるよりもそのまま出したほうがわかりやすいので単純にそのままです。名前の付け方に苦しむこともあって、何かの頭文字をとって、アルファベット一文字にしておいたほうが良かったと思うこともあります(笑)。


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