仲良し兄弟会社の発展
仲良し兄弟会社の発展
もうすぐ200作品を超えパブリック建築もスタート
夫婦のユニットには何回かインタビューをしたことがありますが、兄弟は初めてです。兄弟でやっている長所、短所はどんなことですか。
学氏:まったく自分たちは意識していなくて、名前は覚えてもらえないんだけれど、兄弟でやっているということにインパクトがあるみたいで、雑誌とかでも勝手に納谷ブラザーズとか掲載されました。専門誌ではないですよ(笑)。メディア受けするらしくて、勝手に宣伝になるところがありました。
なるほど(笑)。
学氏:別にそのためにやったわけではないんだけど、意外と兄弟でやっていることで話題にしてくれるんです。
いいことですね。ただ名前がどちらも一字なので…。
学氏:そうですね。どちらがどちらかわからなくなってしまいますよね。
今、正に呼びかける時に間違えないように注意しています(笑)。新さんは他に何か感じることはありますか。
新氏:お互いに他人とやったことがないんで、わからないですけれど、許せるんです。
楽でしょう。
新氏:もう信頼ができているんで。
学氏:ベースがある程度あったところからのスタートになるんでしょうね。
短所はなさそうですね。
新氏:なんでしょうね。
学氏:ちょっと残酷な言葉にはなりますよね。オブラートに包んだ言い方じゃなくて、他人だと気を使ってワンクッション頭で整えて話しますけれど、身内なんでお互いにダイレクトなんです。
ということは意見が違って何かあったりするのですか。
学氏:意見の違いというよりは、もっとくだらない、「その言い方はないだろう!」みたいな話です(笑)。子供の時の喧嘩と一緒のレベルですね。怒っている論点が建築のことではなくて、ズレてきちゃっていて、後で恥ずかしくなるんです(笑)。だからこちらより向こうにいるスタッフが焦っていたりしますね(笑)。また始まったとか思っているかもしれないですね(笑)。
その様子を見てみたいですね(笑)。仕事は分担しているのですか。
学氏:特にはルールがあるわけではないんです。仕事がない時にはふたりでああでもない、こうでもないとやりますけれど(笑)、段々仕事が増えてからはそうも行かないので、どちらか担当者を決めてやっています。
新氏:あとはどの作品を見て来てくれたかが大きくて、それによってその作品を担当したどちらかが担当していきます。
完成している作品はどのくらいあるのですか。
新氏:180は超えていると思います。今設計しているものが全部できたら200にいくんじゃないですか。
それはスゴイですね。進行しているものが複数あるのですね。
新氏:10数件あります。
学氏:小さいものもありますから。
そんなに同時進行しているのですね。事務所のスタッフは何人ですか。
学氏:今日から1人増えたんで7人。
新氏:僕ら含めて9人です。
9人のアトリエ事務所というのは大きいですね。
学氏:2で割ると3、4人ですから、これも大きく見せるコツなんです(笑)。
ここでは1+1は2ではなくて、2.5や3になりますからね。
新氏:そうなるように頑張ります。
納谷さんというと住宅作品が多いですが、最近は違うジャンルの作品もあるのでしょう。
学氏:そうですね。今、メインなのは「尼崎のパーキングエリア」ですね。初めて公募型コンペが取れました。それと小さな田舎の駅舎のリノベーションをやっています。
他にはどうですか。確か幼稚園をつくっていましたね。
新氏:2年前に「昭和こども園」を指名コンペで取りました。
コンペに指名されれば一流ですね。
学氏:でも民間の小さなコンペですから(笑)。僕らにとっては大きいですし、有難いんですけれどね。
住宅以外の作品はコンペが多いのですか。
新氏:今、公共的なものは行政との間にプロデューサーが入って、その人からの紹介で、九州とか四国に行っています。
そういえば日本中でつくっていますね。
学氏:ちょこちょこですけれど。
それもふたりだからできるんですね。
新氏:それはすごく感じますね。ひとりが出張に出ても、ひとりは事務所にいられますから。
所員も安心ですし、対外的にもいいですよね。ますます仕事が増えますね(笑)。
学氏・新氏:いやいや(笑)。
では設計するにあたって、モットーはありますか。
学氏:住宅をやり始めた時から、誰のための、何のための建築なのかということは根本にあって、住宅であればクライアントのためなんだけれど、反面建築というのは公共性ももっていますから、それを天秤にかけながら、一番そこに届くように両方を探りますね。
自分のためではないけれど、自分のデザインということは意識しませんか。
学氏:そこはすごく悩むところですね。図面上で起きていることが、クライアントにとってダイレクトに響くもの、あるいは未来に対して叶えているものであれば、胸を張ってプレゼンできますよね。だからまずは自分がこうつくりたかったからというより、何を望まれていて、そこに対して応えているのかというのを考えますね。
そういう態度はクライアントに受けますね。
学氏:あとは時代性と絡むのかもしれませんけれど、僕らが実作をつくり始めた頃というのは住宅作家がいたわけです。その割に一般には清家(清)さん、篠原(一男)さんの名作が知られていないんです。当時、何かそこに一般の人と建築家とのギャップというか隙間を感じたんです。自分たちは両方にちゃんと話せる立場にいようと思いました。クライアントにも耳を傾けて、つくるものはプロとして建築家としても生きていける。もちろん先人の建築家も同じようにつくってきたんだけれど、それを世の中に対してあまりアピールしてこなかったというか、理解してもらうための手立てをしてこなかったんです。底辺を広げていかないと、相対的に建築のレベルが上がっていかないなと思って、数をたくさんつくって、底上げすることによって、全員が潤うようになっていけばいいと思っています。
非常に社会性のある意見ですね。
学氏:本当にそう思いました。未だになかなか食べられないじゃないですか。だから皆アトリエ系には行かなくて、安全牌で大手事務所に行ったりして、創造に対して積極的に飛び込む人が少なくなっています。それは安定していないとか、未来に対する保証がないとか、そうじゃなくてもっと皆が楽しくつくっていける社会に価値があると思います。
これはすごくいい話を聞きました。
TOTOホームページの無断転用・転記はご遠慮いただいております。