- 1.建築家紹介
- 2.物づくりへの芽生え
- 3.建築家への道程
- 4.菅原流デザインの極意
- 5.緻密な住宅デザイン・コンセプト
- 6.建築タイプ別のソリューション
- 7.今後の方向性
- 8.建築家ギャラリー
建築タイプ別のソリューション
建築タイプ別のソリューション
細部に目が届く微に入り細を穿ったデザイン
上はスクエアですが中は切妻の天井になっているのですね。この形態とストライプがすごく効いています。この設計のコンセプトは。
基本的には森の中の美術館のようなオフィスをつくりたいという話がありました。細切れではなく、色々な場所があるような、机が増えれば人も増えるし、少なくなれば少なくなるような自由さと、自然の広がりというのでしょうか、庭との関係を重視してほしいと言われて設計したオフィスです。やったことは季節の植栽と、倉庫、社長室、キッチン、トイレのような閉じなければいけない部屋の小さい小屋組みヴォリュームを一体的にデザインしたことで、屋内外に色々な溜まり、色々な場所をつくりました。それと横長16mの開口とか、2面が開かれた開口とか、トンネル状の開口とか、色々な開口形状をつくりました。風景を取り込む反射性のある天井パネルは、10パターン位の塗装を試しました。完全にフィニッシュされていないブラストショット加工のような表面に、自然の色合いだけ取り込んでいく。それによって小屋の間、植物の間が色々な居場所群になり、季節、時間、チームメンバーによって、場所を選びながら、働く。
何人位の人が働いているのですか。
今は25人位です。
どういうお仕事をされているのですか。
東京、名古屋、大阪、松阪周辺を中心に飲食、塾、ブライダル、エステなど色々なことをされていて、そのためのバック・オフィスです。松阪の優秀な人材をデザイン、経理、経営戦略のバックオフィスに集める拠点として、この建物が機能しています。
本社なのですね。
はい。
そうすると今おっしゃった地域に色々なお店があって、全体では大きい会社ですね。次にまた仕事が来そうですね。
来てほしいですね(笑)。絨毯、家具、サイン、植栽計画、照明、全部やりました。
「ゆたか幼稚園」には面白い形の壁がありますが、どうしてこうなったのですか。
山並み壁です。色々なプロジェクトに共通しているんですけれど、建物と庭を分けて計画したくないというのがそもそもあります。ここでは建物としてできてしまう園舎を山並み壁によって分解し、屋根のある庭、静かな遊びをする静の庭と、走り回ったりする動の庭を敷地全体に散らばらせようと。その時に、場所を壁によって切り、あちらとこちらをつくるのではなく、その壁を半透明の状態にする。細分化した半透明な状態にすることで、家具と壁と植栽、遊具の密度で、遊びのスピードが変わり、ひと続きにずっと連続していくような場所を目指しました。その高さを1200のラインで切ることで、大人にとっては常に見通せて管理ができるのですが、子供とっては見え隠れする場所になります。そして、色々な場所の雰囲気を検索する装置として反射天井があって、見え隠れしながらあちらには何があるのだろうと暗示する。自ら、遊びたい場所を検索していくような学びの環境を目指しました。
そのように考えていった結果、出てきた形なのですね。
隣の場所で遊んでいる子供たちや風の状況も、見え隠れして、常に環境に開かれています。
天井の仕上げはどうなっているのですか。
全ツヤの塗り天井です。子供の動き、緑の四季の変化みたいなものが入ってきて、この場所、この時間でしか現れない雰囲気が、建物だけではなく、敷地全体に広がっていくような効果を、この天井が担っています。
「CELL + fabric/wood 集合住宅リノベーション」は大胆でビックリしました。
論理的にできていて、部屋の中心にお風呂、トイレ、キッチンがあります。なぜかというと部屋の中心にパイプ・スペースが全部まとまっていたんです。ではここがコアだと施工費も抑えられるだろうと(笑)。SOHOという話だったので、扉側に近いスペース2は椅子に座ったり、立ったりする少し視線の高い場所、1は寝たりするリラックスした少し床に近い場所。3はキッチンなど機能的な場所にしようと考えて、それを立体ボロノイで空間的に取り合ったんです。「切通しの家」と同じコンセプトです。入口があって、ひと続きの場所があるんだけれど、コアを介して別の空間に繋がる。ここはお風呂なので脱衣スペースがあったり洗面があったり、収納があったり。生活の視点高さが異なるふたつの空間の中心から最大の距離が取れる位置を自動的に定着させると、この形態なります。その境界面を木とファブリック、2種類の素材で覆っています。そうしたらこのようなのができちゃったと(笑)。
プラン的にも、立体的にもスゴイ!若い人向けですね。
そうですね。近くにある病院の看護師さんを中心に集客したいということで、非常に手に届きやすいローコストな施工費でした。なのでユニット系の洗面器やキッチンを入れているんですが、それを囲うように境界面だけをしっかりデザインしています。
これも次に仕事が来そうですね。
来てほしいですけれどね(笑)。
菅原さんの仕事にはそういう潜在性があります。コンペもやっていますね。パブリックなものにチャレンジしていましたか。
はい。これは、1951年と61年に竣工した日仏学院の改修と増築のコンペ案です。日本建築界の巨匠、坂倉準三さんが設計された建物と敷地内の庭を改修しながら未来に向けて増築するというものです。2次審査には、僕の前職の上司坂茂さんやSANNA、藤本壮介さんやMIKAN、坂倉事務所など国内外のトップ事務所8社が名を連ね、幸運にも競合の1社となることができました。既存と新築が、地形や歴史と一体化した、文化による新し公共広場を目指し、DIALOG GARDENを提案しました。ほぼ4カ月、真剣に向き合ってきましたが、惜しくも逃してしまいました。審査過程や当選案はそのうち公式に発表されると思います。施設完成時に、8社の案で展覧会もするようなので、互いの案を見るのが楽しみです。
J市駅舎はTNAが勝った「上州富岡駅」コンペではないですか。どういうコンセプトでしたか。
そうです。上州富岡のアイデンティティをどのように駅として表すかという要項だったと思います。我々が着目したのは、富岡製糸場で使っている当時最先端の特殊な木構造とレンガというものを、再解釈できないかということ。実はEurekaさんと組んでやっているんです。駅を使いながら増改築して建てていくので、その時に要求されていた駅の事務室、タクシーの事務室、案内所、自転車置き場、トイレを1個1個ユニットとして、できるところから建てていく予定でした。使いながら更新できる更新性と、あとはレンガの上に富岡製糸場のように最先端の技術で木と鉄骨の屋根架構を築いていくということで、屋内外にさまざまな場所ができ、さまざまな風景を望めるような駅の提案ができないかというのが狙いでした。
全然引っかからなかったのですか。
残念ながら。山並みと呼応するとか、色々考えていたんですけれどね(笑)。
「K市文化会館」コンペもやっていますね。このK市というのは。
柏崎市です。敷地全体をデザインしていくというもので、棚田のような状況を引き込み、遠くに象徴的な山が見えるので、それを棚田から見せて行こうと。
オープン・コンペですか。
オープンです。十津川村「高森のいえ」と他にいくつか指名コンペがあります。
指名コンペが来るようになると勝率がグッと上がりますね。今は何かやっていますか。
プロポーザルで2次が通っているものがひとつあります。
ランドスケープ的なものも好きですか。
大好きです。フランスでも「“Body LandSpace”@ ORLEANS」をやっていますから。これは「ArchiLab 2006 Japon」の時のインスタレーションです。
僕は菅原さんの「風景のリノベーション 水と彫刻の丘」が好きです。
市原市ミュージアムのコンペ応募案です。勝ったのは有設計室さんでした。
すごくいい案でしたよね。
そう思っているんですけれど、なぜだろうと…(笑)。
コンペでひとつ勝つと大きいですよね。
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