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品番がわからない場合


当初は別荘建築が得意

当初は別荘建築が得意
ユニークな別荘デザインで次々と仕事をゲット

TNAの所員は今何人ですか。

鍋島氏:4名+私たち2名です。

事務所に仕事はどのように入ってくることが多いのですか。

鍋島氏:書籍やインターネットで私たちの設計した建築を見て気に入って下さり、連絡してくださることが多いです。あとはリピートで依頼してくださることもあります。

事務所ビル外観/見送りに来てくれたふたり

事務所風景

それは作品に魅力があるということですね。雑誌に掲載されることも多いと思います。必死に営業をすることなんてないのでしょう(笑)。

武井氏:営業には向いていないと思います(笑)。

最初の仕事はどうやってゲットしたのですか。

武井氏:手塚建築研究所で一緒に仕事をした施工会社の営業マンから、こだわりのあるクライアントさんが家を建てるので「手伝ってくれないか」と言われました。設計も引き受ける工務店だったのですが開放的な住宅が好みらしいけれど、こだわりが強いクライアントさんなので、設計を手伝ってもらえないかという話でした。

それはどの作品ですか。

鍋島氏:「キバリの家」です。

独立したばかりは仕事がなかったという話をよく聞きますが、そういうことはなかったのですね。その次はどうですか。

鍋島氏:手塚建築研究所で担当をさせて頂いたクライアントさんに、お友達を紹介していただきました。それは横浜の「カラコンの家」です。また「ふじようちえん」を独立前、最後に担当させていただいたのですが、「ふじようちえん」の建具工事を担当されていた方からクライアントを紹介していただいたこともありました。

カラコンの家 (C)DAICI ANO

ふじようちえん (C)手塚建築研究所

輪の家 (C)DAICI ANO

「輪の家」は。

武井氏:「キバリの家」を雑誌で見たディベロッパーの方に声を掛けていただきました。

「輪の家」は何階建てかわからないスケールレスな感じで、軽井沢の森の中にビルのように建っています。どうしてああいうことを考えたのですか。

武井氏:「別荘を考えてください」と言われたので、新しい別荘はどういう形かなとずっと考えていました。通常、別荘というと三角屋根の平屋の建物で、リビングの前にデッキが付いていて、そこでバーベキューをしているというイメージがあると思います。確かに森の中で暮らしている感じはするとは思いますが、いざ室内に居る時にどれだけ身近に森を感じられるかどうかを疑問に思ったのです。もしかしたら窓の先に綺麗な森が広がっているだけで、都心でもちょっと回りに緑があれば同じような環境になるのではないかと思いました。やはり別荘のまわりにある圧倒的な自然の豊かさを満喫することのできる建物にするべきだと。そのためできるだけ森の木々と近接させて、全方向を窓にしました。そして生活に不可欠なさまざまな備品は黒い帯の中に隠し、視界から消えるようにしました。そうやって、黒と透明の帯が交互に積まれ、何階建てかわからないようにしました。

中は吹き抜けているのでしょう。

武井氏:はい。1階は4mくらいです。

ああいう別荘は初めてです。他にも「廊の家」「方の家」「展の家」という別荘がありますが、全部つくり方が違っています。同じものは絶対につくりたくない人なんだと思いました(笑)。「廊の家」は空中に飛び出しています。あのアイディアはどういうところから出てきたのですか。

武井氏:崖の一番下に道路があるので、下からアプローチします。敷地が尾根の稜線までだったんです。最初は上の尾根に建てようかとか、いろいろと検討してみました。しかし何か建ち方としてしっくりこなかったんです。おそらく建物が目立ってしまったり、埋もれてしまったりしていたんだと思います。建築は、特に別荘の場合は、どうしても自然の中に暴力的に建ってしまいます。建物が建つことで、まわりの自然もより良く見えるようにしたいと考えました。

鍋島氏:「輪の家」では木を3本しか切っていません。別荘を建てる時に、木を3本しか切らずに済んだのはこの辺りでは珍しいことだと言われました。建物の配置は実際現地でロープを張り、木の位置を確かめながら決めていきました。木と建物の関係はとても重要です。

廊の家 (C)DAICI ANO

方の家 (C)DAICI ANO

展の家 (C)DAICI ANO

「方の家」は細い柱で崖に浮く家です。そして「展の家」は放射状のプランが開放的でスゴいですね。下がピロティになっているのですね。

武井氏:「展の家」は道路付けが敷地の上と下にあるので、どちら側の道からもアクセスできるようになっています。敷地の勾配は山を散策することができる程度の勾配になっていて、ピロティを通って中庭から建物内に入れることができます。

中庭から階段で上がれるのですね。別荘の仕事は口コミですか。

武井氏:雑誌を見たクライアントからの依頼です。その雑誌で別荘を建てる時の注意点を述べるという記事を書いたのですが、まずひとつめは冬に見ること。皆さんは、別荘は夏に使うイメージをもたれていますけれど、冬に確認して下さいと書きました。なぜかというと葉っぱが落ちると木々の隙間から今まで見えなかったものが意外に見えてくるんです。まずそれをチェックしてくださいと。2つめは虫は諦めてくださいと書きました。どんなに穴を塞いでも虫は入って来ますと(笑)。

鍋島氏:それから、3つめはよく別荘で目にするデッキは本当に必要ですか?と。デッキを使うのは大体夕食時なんです。そうすると明かりに吸い寄せられた虫が入ってくるので、結局閉めてしまいます。もし本当にデッキがほしいのであれば、建物から離して木々の葉っぱの下につくると良いでしょうとも書きました。まさに「輪の家」ではそのようにデッキがあります。雑誌に掲載後、「あなたは別荘のことをよくわかっている」とおっしゃってくださったのが「展の家」の施主でした。それで設計を依頼されたんです。元々古い別荘をお持ちの方で、別荘のことをよくご存知でありながら、新しく別荘を建替えたいとのことでした。

武井氏:われわれは別荘というのは最小限の大きさにしたほうがいいですという話をしています。われわれが提案する別荘はあまり大きくありません。すべて100平米程度の面積しかありません。小さくするということは、森を、自然を大きく感じることができます。そういうことを心掛けています。

おふたりは別荘をお持ちなのですか。

武井氏:持っていません(笑)。

他人の別荘でいろいろ勉強したのですね(笑)。建築家は周辺コンテクストのリサーチを行って、いろいろな情報をピックアップします。それをどう形にしていくかという時に、何かどんでん返しのようなことをやっていて、ビックリさせられます。TNAは都市型の住宅でも必ず何か新しいことにトライしています。中でもビックリしたのが「キリの家」です。考え方がラジカルですがクライアントは何も言わないのですか。

鍋島氏:「キリの家」は最初に提案したアイディアをとても気に入ってくださり、細かい曲率の寸法調整を経て、そのままの案で建てられています。

キリの家 (C)DAICI ANO

移動のためだけの空間であるスロープが生活の空間になっています。ご夫妻のための住宅ですか。

鍋島氏:将来のために子供部屋のスペースも用意しています。

あのスロープはずっと続いているのですね。

鍋島氏:屋上まで続いています。

武井氏:全部スロープで続けると勾配が足りないのです、急になってしまって。所々で断続的に切断することで、何となく居場所が分かれるようになっています。意識として空間が切れていることも必要なのです。

鍋島氏:ちょっとした段差が座る場所にもなったりして建築の軀体が家具のように振る舞います。

あの形で設計して実際に建てるわけですから、スゴいですね。

武井氏:最初にお会いした時に、私たちのどの建築が好みで、どのような生活スタイルなのか、予算なども考慮して案を出すようにしています。突如湧いてきた形ではないんです。勾配などについて実際の場所に同行して、確認をしています。


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