閉じる

品番がわからない場合


著名建築家からの薫陶

著名建築家からの薫陶
塚本さん、手塚さんの教えが息づくTNA

塚本さんからどのようなことを学びましたか。

武井氏:建築というのは非常に複雑な要因でつくられているということですかね。学生の頃は課題を自分なりに解いていただけでしたけれど、小さい住宅でさえも単純なコンセプトだけでは足りないということを思い知らされました。建築の自律性と他律性とでもいうのでしょうか、建築の奥の深さを感じました。

TNAの作品を見るとそれは感じます。建築は単体のものではないというのはありますね。手塚さんから学んだことはどうですか。

武井氏:塚本さんの研究室から手塚さん事務所へ移った時、建築に対する考え方が全く違っていることを知りました。上手く言えないのですけれど、建築が備えていなければならないスケールがあるということを教わったと思います。建築空間の心地よさは、大きさとか高さとか、プロポーションによって決まるということですね。外形から決まっていくのではなく、室内のボリュームから決まるんだということ。僕がとても驚いたのは「モデュール」です。単純なことですけれど、例えばダイニングに家族構成に応じたテーブルの大きさがあり、そのテーブルの周囲には動線のための余白がないといけない。リビングのソファや個室のベッドも同じように決めていき、室内壁の内法は、910(900)mmか1mのグリッド・モデュールから決まる。

そうすると中の居心地はいいでしょうね。

武井氏:とてもゆったりしていて快適です。

確かプロクセミックスという人や物などの距離を研究する分野があります。仕事の内容によってスペースの基準が決まっているようです。

武井氏:当時、手塚さんは建築のスタンダードをつくりたいとおっしゃっていたと思います。それは人々の暮らしの中に、最低限の距離、最低限の採光、最低限の通風などがあるということを学びました。

それをやると結構スペースを取るかもしれません。

鍋島氏:塚本さんの「ミニ・ハウス」はその名前が象徴するように、その室内寸法は特別です。リビングに置かれたピアノが家の中心に程よくフィットしている。手塚さんの設計では、ダイニングテーブルやピアノを配置する時に、一定のモデュールを必要としますから、室内スペースは必然と大きくなります。

ミニ・ハウス (C)アトリエ・ワン

ヒル・ハウス

5月の連休にグラスゴーに行く機会があって、マッキントッシュの「ヒル・ハウス」を見て来ました。彼もインテリアから設計し外観をつくっていて、「ヒル・ハウス」をつくった際には、施主の家に何日か泊まって、生活を共にして、それで内部を最初にデザインしています。イギリスにはそういう伝統があるのかもしれません。塚本さんと手塚さんではアプローチの仕方はそんなに違うのですね。

武井氏:それは僕だけがそう感じていただけなのかもしれませんが、どちらのアプローチも建築をつくる上では大事だなと思っています。だから建築は奥が深いものだと思うんです。構造や形をゼロから考える建築というのは、家具から都市計画まで小さい出来事から大きな風景にまで広がりをもっています。


TOTOホームページの無断転用・転記はご遠慮いただいております。

Page Top