- 1.建築家紹介
- 2.世界の2大建築賞を受賞
- 3.魅力の伊東デザイン
- 4.藤江和子さんと名コンビ
- 5.豊富な作品バラエティ
- 6.巨匠は巨匠に魅せられる
- 7.建築作品ギャラリー
豊富な作品バラエティ
豊富な作品バラエティ
作品レパートリーの広さが伊東建築の特徴
ここまで最近の作品を中心にお話を聞きましたが、伊東さんの建築を見るとすごくバラエティに富んでいます。過去に遡るとさらにいろいろなタイプの作品があって、僕らは非常に楽しいですが、つくり手側はどうやっているのだろうと思います。伊東事務所でのデザインの進め方を教えてください。
最初に僕が絵を描くケースは滅多にないですね。たまにはこれで行こうというのを最初から出すこともあるのですが、それは稀です。チームを組んで、チームで勝手に考えるようにやらせておいて、その中ではこれがマシかなというのを何度も何度も繰り返します。僕自身も何がテーマになるのかを考えているんです。それがすごく優秀なスタッフがいる時代はガンガン面白い案が出てくるから、こっちも今日のミーティングでどんな案が出てくるのかすごく楽しみなんですが、最近は大人しくなってきちゃいましたね(笑)。
それは今の学校教育の影響だったりするんでしょうかね。
どうなんですかね。競争心があまりないんですね。野球を見ていても、今の若いプロ野球選手にそれを感じますからね(笑)。僕なんか歯がゆいですよ。
伊東さんは学生時代に野球をやっていましたからね(笑)。そうすると伊東事務所ではグループごとなんですね。
特に最近はグループ制にして、ABCDEと5つのチームにベテランから若手までが散らばるようしています。
それはプロジェクトごとにですか。
このチームでこのプロジェクトはやろうとか、このプロジェクトはこのチームとこのチームでコンペティションにしようかとか。
なるほど社内コンペですね(笑)。
今までひとりずつにやらせて、ひとりずつが案を出してきたわけです。それですごくいい案を出してくる時にはこっちも楽しいけれど、どれを見ていてもこんな案ばかりかとなるとミーティングをする気がなくなっちゃいます(笑)。それでチームでまず相談して、話合いながら案を出させるようにしました。それがうまく行くかまだ未知数ですが…。
最近は伊東さん自らがスケッチを描く機会は少ないということですね。
描かないわけではないんですが、あまり何も出てこないとこっちがイライラして描かざるを得ないし…(笑)。
伊東さんの作品は本当にバラエティがあります。その伊東さんの対極にあるのがミースです。ミースはひとつのタイプをアレンジして少しずつ高めていくというやり方です。伊東さんのようにまるきり違う新しい案が出てくるということがありません。伊東さんとミースが対極にいて、その間に安藤(忠雄)さんや磯崎(新)さん、コルビュジエもいると思っています。
コルビュジエは結構自分自身で描いていると思うけれど、彼のはすごく生き生きしていて楽しいですよね。昔、僕の甥が磯崎さんのところにいたんです。それで辞めた時に仕事がないから、僕が「一緒に仕事をしようか」と言って、ひとつのプロジェクトをやり始めたんです。そうしたら彼が途中で怒り出して、「磯崎さんは全部スケッチを描いてくれた。お前は全然描かない。もう一緒にできない」と(笑)。
やはり親分はスケッチを描くものなんですね。
磯崎さんもそうだったんです(笑)。安藤さんもそうでしょう。
波形のファサードで新しいですが、あの界隈ではOKなのですか。
バルセロナって不思議で、普通の建物をつくるぶんには何も言われないんだけれど、ちょっと変わったものをつくろうとすると、市長直属のデザイン委員会があって、そこに行ってこういうデザインをやりたいとプレゼンしなければならないんです。
伊東さんもプレゼンをしたのですか。
そうです。それで結構厳しいことをいろいろ言われるんだけれど、面白いのは30分位のプレゼンが終わった後に、その委員と一緒に昼飯を食べるんです。もう和気あいあいって感じ(笑)。詩人とか、作家とか、いろいろなジャンルの人からなる委員会なんですよ。楽しかったです。
斬新なファサードがよくできたなと思っていました。
ガウディのオマージュではあるけれども、100年経った時にもっと軽いファサードをつくりたいんだということは言いました。はす向かいの「カサ・ミラ」のうねりへのオマージュです。
確かに「カサミラ」のうねりは石で重たい感じですからね。では次に仕事の取り方について教えてください。伊東さんの知名度だと特命も多いと思いますが、コンペとどちらが多いですか。
最近コンペティションで勝てなくて(笑)、特命の仕事が多いですね。
伊東さんがコンペで勝っていたのはいつ頃ですか。
90年代ですね。柳澤(潤)さんとか、横溝(真)さんとかがいた頃には連戦連勝とまではいかないけれど(笑)、国内では6、7割勝っていましたね。海外を入れても5割だったな。そういう時代があるんですね。最近はこんな若者みたいなことはやりたくないと思って、表現的なことを抑えると負けちゃうんですよね(笑)。
スタッフにできる人がいるというのがコンペの強みのようですね。
それはもちろんそうですね。表現ができるというよりもコンセプトを共有できるということがすごく重要で、あいつらは僕がスケッチを描く前にいかに自分が案を出すかというので、朝事務所に行くと机の上に置いてあったりしましたから。その頃は本当に楽しかったですよ。飲みに行っても建築の話ばかりしていました。今は昼飯に行っても、建築の話なんて誰もしないですからね。こちらが齢をとったからかもね(笑)。
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