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品番がわからない場合


展覧会巧者

展覧会巧者
当初は展覧会やコンペが仕事のベース

卒業後はどこの事務所に入ったのですか。

猪熊氏:僕は千葉学事務所です。

どの位いたのですか。

猪熊氏:短いんです(笑)。2年しかいなかったんです。

担当した作品は。

猪熊氏:一番メインでやっていたのは学会賞(日本建築学会賞)を取った「日本盲導犬センター」。今でも千葉事務所の番頭さんをしている人とふたりで現場を担当しています。現場初担当が3,000m²で、バタバタでした(笑)。

日本盲導犬センター(C)西川公朗

日本盲導犬センター
(C)西川公朗

他に担当した作品はありますか。

猪熊氏:並走して動いていた住宅とか集合住宅とかを、ちょっと空いた時に手伝う形が多かったです。あと「盲導犬センター」が終わった後、半年位事務所にいられたので、そこではギャラリー・間の千葉学展を担当しました。
成瀬氏:私は設計事務所に就職はしていないんです。SANAAで4か月位アルバイトさせてもらったり、あとは坂倉建築研究所でも何か月かアルバイトさせてもらったりとか、千葉先生のところでも2か月位アルバイトで働いています(笑)。

実践的なことを覚える機会ですね。その後に独立したわけですね。

成瀬氏:それは成り行き的なところがあるんです。仲の良かった留学生の友達がいて、彼女の知合いが彼女にマンションのリノベーションを頼みたかったんですけれど、彼女は帰国しなくてはいけなくて、私が頼まれました(笑)。それでリノベーションをすることになって、それをまずちゃんと終わらせようということで、自分の事務所をつくりました。

それが「ROOM 101」ですか。

成瀬氏:そうです。

ROOM 101(C)西川公朗

ROOM 101
(C)西川公朗

オープン・ハウスで伺いましたが、その案内に出ていた写真が非常にフォトジェニックで魅力的でした。

成瀬氏:来ていただいて、ビックリしました(笑)。

あの壁から突出している収納は、どこから物を入れるようになっているのですか。

成瀬氏:あれは側面に扉が付いていて、食器を入れたり、ワイングラスを入れたり、いっぱい荷物が入っています。

キッチン側から出し入れができるようになっているのですね。

成瀬氏:そうです。リビングの方から見ると扉は一切ないような状態になっています。

いい感覚をしているなと思いました。その後すぐはあまり作品がありませんけれど、展覧会はやっていたでしょう。「ひとへやの森」も見に行っています。

猪熊氏:来ていただいていたんですね。

ひとへやの森(C)西川公朗

ひとへやの森
(C)西川公朗

先に自分たちの考えを展覧会で発表して、ちょっと経って実現している感じがしました。

成瀬氏:必然的にそうならざるを得なかったというのはあります。
猪熊氏:何しろ営業をして、仕事を取ってくるというのが下手な設計事務所でした(笑)。何をすればいいかわからないというのがありました。

でも展覧会のやり方がうまい。それを実作へと繋げるのは強かですよ。

猪熊氏:展覧会が勝負でした。こういう人がいますとアピールしないと、本当にいないのと同じになってしまうので、できる限りのことはしようということで、展覧会をしていました。展覧会はコンセプト重視なので、「君たちは何をやりたいんだ」という話を、建築系の方、別のデザインをされている方、まったく業界と関係のない一般の方にもします。当初は、その時の答え方が相手の業種によって揺らぐことがよくありました。例えば建築系の方には建築的に興味のあることを答えるわけですが、一般の方には通じないといったような感じです。同じことを語れない、使い分けしないと説明できないレンジの狭いコンセプトは面倒臭いと思いました。あるいは社会性がないとも言えます。建築の中だけで通用するコンセプトを語って、小さい差別化をして生きていくって、何なんだろうと。展覧会をたくさんやっている中で、だんだんそこが問題と感じ始めたのが、シェアの話をするきっかけになりました。こういう形をつくるのが好きですとか、こういう生成原理でものをつくりますというのは、一般の方にはよくわからないんですよね。
成瀬氏:自分の親に話して全然わからないというのは、微妙だよねという話をしました。
猪熊氏:親が「意味がわからない」と言うんです(笑)。

親を試験台にしているのですね(笑)。

成瀬氏:それがすごくいいんです。「何をやっているの」と言われます(笑)。
猪熊氏:バッサリ切られます。「よくわからない」と言われて、終わりです(笑)。

事務所を開設したのはふたり一緒ではなく、成瀬さんが最初に事務所を開設したのでしょう。

成瀬氏:リノベーションをやっていたので。
猪熊氏:僕が後からジョイントしたという形です。

同じ大学なのでお互いに知っていたと思うのですが、事務所に加わったというのは。

成瀬氏:学生の時にコンペを一緒にやっていました。

どんなコンペにチャレンジしていたのですか。

猪熊氏:東京電力が主催のものとか、街づくり系のものもチャレンジしていましたね。

学生時代から建築的に協力していたのですね。成瀬さんが先に始めていたけれど、いつかは一緒にやることになっていたのですね。

猪熊氏:見に来ていただいた「ひとへやの森」もエイブルさんが主催のコンペで、成瀬は独立していて、僕はまだ千葉事務所にいる時に、あのコンペがありました。僕は千葉事務所にいたので、対等には手伝えていないんです。たまに相談に乗るくらいで、成瀬が主体でしたが、それも取れてしまいました。一緒にやると勝率がいいというのがありました(笑)。

なるほど。

成瀬氏:「9坪ハウスコンペ」もそうです。
猪熊氏:「9坪ハウスコンペ」も成瀬が主体で、僕はまだ千葉事務所にいるという状態で、取れてしまいました。もしかして今辞めたら、そのまま食べていけるのではなかろうかという錯覚に陥りました(笑)。
成瀬氏:甘かったですね(笑)。
猪熊氏:その後5年仕事がありませんでした(笑)。

9坪ハウスコンペ(C)成瀬・猪熊建築設計事務所

9坪ハウスコンペ
(C)成瀬・猪熊建築設計事務所


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