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品番がわからない場合


これからの社会における弱者救済の建築にチャレンジ

これからの社会における弱者救済の建築にチャレンジ
高齢者施設、福祉施設、障害者施設を設計したい

今まで見た建築でインパクトを受けたものにはどんなものがありますか。

成瀬氏:海外だとハンス・シャロウン「ベルリン・フィルハーモニー・コンサートホール」は、ダンスをしているみたいな建築で、見ていて楽しかったですね。皆がおしゃれをして音楽を聴きに行く空間で、聴きに行く前段階としても楽しいし、終わった後の余韻もあの空間だったらすごくいいだろうなと思いました。豊かな建築だと、すごく感動しました。そのほぼ向かいにある「ベルリン州立図書館」にも入ることができて、すごく気持ちのいい空間で、皆が思い思いに好きな席に座って、読書や研究をしているんですが、建築が優しいんです。大好きです。

ハンス・シャロウン

ハンス・シャロウン

ベルリン・フィルハーモニー・コンサートホール

ベルリン・フィルハーモニー・コンサートホール

ベルリン州立図書館

ベルリン州立図書館

金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館

フランク・ゲーリィ

フランク・ゲーリィ

ビルバオ・グッゲンハイム美術館

ビルバオ・グッゲンハイム美術館

日本ではどうですか。

成瀬氏:SANAAの「金沢21世紀美術館」ですね。あれも優しい建築だと思います。走り回ってしまいました(笑)。

丸い形というのは優しいですよね。猪熊さんはどうですか。

猪熊氏:僕はゲーリィが大好きなので、もっと見に行きたいんですけれど、見たものは限られています。「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」は学生の時に見に行って、衝撃を受けました。あえて言うのなら、彼も構造体がラフに剥き出しです。曲面の内側を支えている構造もグニャグニャのまま全部現していて、裏でありながら見える要素となっています。人工物でできていながら、意図されないノイズのある空間。結果的に森の中を歩いているような感覚になります。それが好きなんだと自分でも思います。

「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」みたいな建築は他の建築家にはできませんね。

成瀬氏:つくりたい建築の空間の質みたいなものは共感します。
猪熊氏:ものすごくインパクトのある特徴的な外観と空間をしているんですけれど、あまり力まなくても行けるような優しい空間です。ゲーリィのつくる建築は、地元の普通のおじさん、おばさんでも入れる雰囲気のものが多いんです。それは大事なことだと僕は思っていて、シェアとかパブリックみたいなことを意識する時に、カッコつけないと入れない空間をつくってはいけないと思います。
成瀬氏:ゲーリィの建築は開かれています。

忙しいと思いますが、土曜日、日曜日はちゃんと休んでいますか。

猪熊氏:日曜日はほぼ休みになっています。
成瀬氏:土曜日は隔週で休みです。
猪熊氏:僕らは隔週の休みの時に、僕らだけの仕事をしに来ていますけれど(笑)、スタッフは隔週で休みになるようにしています。

勤務時間は何時から何時までと決まっているんですか。

成瀬氏:朝は10時からです。
猪熊氏:人によってであるものの、夜はまあまあ長くなってしまいますね。
成瀬氏:私は子供のお迎えがあるので、18時15分には帰っています。

忙しくて趣味はないという建築家も多いのですが、おふたりはどうですか。

成瀬氏:美味しいものを食べに行ったり、つくるのも好きですね。
猪熊氏:僕は忙しくなってから難しいですけれど、旅行に行くことがすごく好きですね。それが功を奏してか、出張も好きです(笑)。

出張先で建築を見ることもできますね。

猪熊氏:そうですね。出張だと、無駄にウキウキしてしまいます(笑)。色々なものも食べられますし(笑)。

東京では食べられないものが食べられますからね。

成瀬氏:福岡に出張に行かせてもらったことがありますけれど、美味しいものがあるんですよね(笑)。
猪熊氏:旅行はやっぱり楽しいですね。刺激もいっぱいもらえたりするので、そういう時に新しいことを思い付いたりもします。

現在、進行中で発表してもいいものはありますか。

猪熊氏:「小田急相模原駅前再開発」ですね。再開発なんですけれど、マンションと商業棟がブリッジで繋がって、われわれが手前にある商業棟にしっかり入って、ファサードから内装まで、今計画をしています。

小田急相模原駅前再開発(C)新日鉄興和不動産株式会社

小田急相模原駅前再開発
(C)新日鉄興和不動産株式会社

三島プロジェクト(C)成瀬・猪熊建築設計事務所

三島プロジェクト
(C)成瀬・猪熊建築設計事務所

シェア・スペースですか。

猪熊氏:そうですね。公式のプレスリリースには中身ついてはまだ出ていませんが、とても素晴らしい取組みの施設になると思います。あとは三島にもプロジェクトがあります。

将来つくりたい建築はありますか。

猪熊氏:色々ありますけれど、手を出せそうで、意外と竣工まで行き着いていないものが福祉系の施設なんです。本当はとても大事なものだと思っていて、ぜひやりたいと思っています。

それはパブリックですか。

猪熊氏:本当にオープンなパブリックにはならないと思いますが、どんどん少子高齢化していくと、老々介護になるとか、お年寄りがひとりになるという話が増えていきます。それは建築も含めて解決して行かないと、あるレベルまで行ってしまうと大問題になると思っていて、そこに早い段階でアプローチして、オルタナティブな答えを見つけていきたいと思っています。

まだ1件もやっていないのですか。

成瀬氏:高齢者の施設は設計の途中で止まってしまったものがあります。
猪熊氏:シェアハウスをつくっているので、「グループホームは得意でしょう」と言われることがよくあるんです。その度にやりましょうと盛り上がるんですけれど、個別の事情で、惜しいところで動いていません。これこそが新しい住み方だと言えるものをつくりたいと思っています。
成瀬氏:母親が病気なもので施設に入っているんですけれど、そういうところに行くと、地域から隔絶されているので、中の空間がどんなに良くても、まわりから見ると巨大な建物が建っている異様な感じになってしまっています。シェアハウスもまったく同じで、何人かで中で楽しく住んでいても、閉じてしまうと、まわりからは奇妙なものに見えてしまいます。それを地域とどう繋いでいくかということは大事で、高齢者施設、福祉施設、障害者施設が、地域にあって当然という雰囲気をつくることは、実はまだそれほど成功事例はなくて、やりたいと思います。

それは正にこちらの事務所の仕事になりますね。

猪熊氏:ぜひ、実現したいと思っています。

コンセプトにあげていることと合いますね。それはこれからの複雑な社会の建築家に求められる重要な資質のひとつですね。

成瀬氏:すごく興味があります。
猪熊氏:弱い人たちが隔離されがちな社会にどんどんなっているんです。しかも一見弱っていることが見えづらくなっています。それは問題だと思っていて、そういう人たちが堂々と生きられるようにしていくのが、建築の力だと思っています。収入とか、障害とかも含めて、弱い側にいても楽しくできるという意味と、プライドがもてるという意味でも、建築は効いてくるので、そういう場づくりがしたいと思います。

今日はいい話を聞くことができました。ありがとうございました。

インタビュー風景

インタビュー風景


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