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品番がわからない場合


作品の種類

作品の種類
住宅もビルも共にデザインのバラエティがでてきた

藤村さんの集合住宅である「BUILDING K」「APARTMENT B」「APARTMENT S」「APARTMENT N」などはRC打放しで、規則正しい窓で、設備系がキレイにまとまっていて、同じように見えます。つまりデザインされたようなところがよく見えない。デザインしているけれど、デザイン、デザインしているところがあまり感じられません。このまま行くとどうなるのかと思ったら、『批判的工学主義の建築』の中で、「家の家」という作品では意匠、工学、社会が繋がったと意匠という言葉が出てきたので安心しました(笑)。

そうでしたか(笑)。

BUILDING K
写真:鳥村鋼一

APARTMENT B
写真:太田拓実

APARTMENT S
写真:太田拓実

APARTMENT N
写真:太田拓実

家の家
写真:太田拓実

東京郊外の家

倉庫の家
写真:太田拓実

小屋の家
写真:太田拓実

フィッシャー邸

SHOP U
写真:鳥村鋼一

フローレンス・ローウィ・ブックショップ
Courtesy Jakob+MacFarlane

「家の家」でいう意匠のレイヤーが加わったというのはどういうことなのですか。

意匠のレイヤーというのは基本的にはずっとあるんですけれど、「家の家」ではちょっと柔らかくなったというか、表情が出てきたような感じです。それは経験があるのかもしれませんし、クライアントのパーソナリティもあるかもしれません。

住宅では「東京郊外の家」「倉庫の家」「小屋の家」などを設計していますが、デザイン・バラエティが出てきています。そういう意味では「家の家」は大きな変節点ですね。

そうだと嬉しいです。

「東京郊外の家」はルイス・カーンの「フィッシャー邸」に似て平面的に角度がついていますが、敷地に沿ってやった結果なのですね。

そうなんです。

これからも設計の仕事は多いのですか。

最近ようやく増えてきたという感じでしょうか。少しずつ増やして行きたいと思います。

プロトタイピングというのは超線形プロセスをやるための手段だと思うのですが、毎回これをつくるというのは時間がかかると思います。コンピュータの中ではできないのですか。

将来的にはそういうふうになっていくかもしれませんけれど、私たちの学生時代に妹島(和世)さんたちがひとつの住宅に100個も200個も模型をつくるということをやり始めて、すごく影響を受けました。長谷川豪は「毎回1000個つくる」と豪語しています(笑)。
私はせいぜい30個か40個しか作らないので、工学的な分、割と少ないほうではないかと思っています。これも自分なりの合理的な判断で、こういう超線形的なやり方をしているほうが結果的には意志決定が早く、クライアントの合意も取りやすいので、自分としては今のところこのやり方が合っていると思っています。

長谷川豪氏

意志決定というのは自分が最後に決めるときのことですか。

いいえ、了解をとるほうです。例えばクライアントとか、周辺の住民とか。

これだけリサーチと分析を続けてやっていきますから、クライアントへの説得力はありますね。「SHOP U」という作品はどうしてくねった形になったのですか。

クライアントの方はそれまでずっと他でお仕事をされていたんですけれど、食器屋さんを初めて出すということで、仕様がまったく決まっていなかったんですね。どういうお店にするかというイメージもそこまではっきりおっしゃらなかったので、決まっているところから少しずつ考えていきましょうということで、奥行きのある棚をつくって、両サイドに並べることから始めました。
ただ普通のお店では両端に棚があって、真ん中にテーブルがあってと決まっていくんですけれど、普通のオープンな空間にただそれがあるだけだと、お客さんも入りにくいし、来た人もゆっくり見づらいというのもあります。そういう人の心理をもう少し追求していこうと考えて、両サイドから突起を出していったら、どのくらいの突起を出したらいいのかとか、どういうルールで出したらいいのかというスタディが始まりました。

突起というのは展示するスペースを増やすという意味ですか。

そうですね。それと両端に棚があるだけでは空間が開き過ぎているんで、お店の人が「こんにちは」と言っても向かい合う感じが出てしまいます。もう少し距離感をつくりたいけれど、あまり隠してしまう感じだとお客さんもお店の人とコンタクトしにくくなってしまいますし、万引きみたいなことも増えてしまうかも知れないので。隠し過ぎず、でも距離をつくりつつと、それは非常に心理的なものだと思います。それを模型で試しながら、これくらいならちょうどいいだろうというのを探していったということです。
それは、すごく不思議な経験でした。クライアントといっしょに模型を覗き込みながら、前の案よりこっちはここがいいけれどここがダメと改善していったら、自分が最初想像していたのとはまったく違う形が最後に出てきた。しかもそれがすごく機能的で想定の3倍の売上げが出たとおっしゃって、すごく喜んでいただきました。そういうふうに人と一緒につくっていくのがいいなと思ったので、その後はそういうやり方をするようになりました。

フランスのジャコブ+マクファーレンの初期作品に「フローレンス・ローウィ・ブックショップ」という本屋があるのですけれど、それに似ています。彼らの作品は全部くねっていますから(笑)。

デジタル・ファブリケーションが出始めだったので、工場に合板とデータを持ち込んでマシンで切ったりして、そういう試みがちょっと流行りましたね。世代的な共通感覚は感じました。

先日見た高円寺の「BUILDING K」はどのようにつくられたのですか。

最初は集合住宅とも決まっていなくて、商店街だから儲かれば何でもいい、パチンコ屋さんでもいいと言われて(笑)、真面目にパチンコ屋さんも入れるような四角いビルでパチンコ台を並べるとこうなりますなんてやっていたんですけれど、だんだんコンサルの方とか不動産の方とかが入ってこられると、別の意見が出てきて、例えばあそこは3階以上はお店として成立しないとか、2階も今は厳しいなんて言われて、ワンルーム・マンションにしなさいと言われました。
クライアントの経験で、ワンルームマンションは最初は他と同じアイテムを揃えておけばお客さんは付くんですけれど、20年経ったときに価値がなくなるということをご存知で、ちゃんと建築としてきちんとした特長をもっていないと、ここに住みたいという人は現れないんだということを思っていらっしゃいました。最初はどこかのゼネコンがどんどん図面を出して、営業をかけていたようなんですけれど、それはどうもイマイチだと、自分たちがつくりたいと思えるようなものではなかったとおっしゃっていました。

それで藤村さんのところに仕事が来たのですか。

私がたまたま声を掛けられて、案を持っていったらそれを気に入っていただいて、特に気に入っていただいたのは、屋上にペントハウスをつくって、屋上にちょっとした路地をつくるという案でした。その屋上のスペース自体は20年経っても価値として残るから、こういう価値をもった空間をきちんとつくりたいとおっしゃっていました。それでああいう建築ができたという感じです。

テンション構造を使って1階は無柱で広く開放感がありますね。

そうですね。上のほうが細かく割れていて、タワーが集合したような形になっているのですが、そういう都市的な造形をすると、例えばタワーが10本あると下には40本の柱が降りて来てしまうわけです。そうすると柱だらけになってしまうので(笑)、それをどうやって柱を集約するかということを考えたときに、構造の大野博史さんが「上のほうで集約すればいいんだ」とおっしゃって、メガ・ストラクチュアというのはメタボリズムみたいでカッコいいなと思いました(笑)。室内の柱型もなくなるし、1階も開放的な構えが作れるのでぜひそれでいきましょうと、クライアントにも説明しました。

BUILDING T

鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設
写真:太田拓実

「BUILDING K」の後にも3つに分かれた「BUILDING T」というのもやっていますね。

そうです。外装がガラス、断熱パネル、アスロックの3種類の仕上げ材で松・竹・梅に分けてできています。

ビルディング・タイプにもバラエティが出始めています。「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」などもそうですね。


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