閉じる

品番がわからない場合


福山からインターローカルな進出を目指す

福山からインターローカルな進出を目指す
福山から世界へ発信

最後に前田さんのプラベートな話を聞かせてください。前田さんは休みの日にも会社に出てしまうタイプですか。

そういうときもあります。

ファミリー・サービスはしていますか。

ときどき溜めてやっています(笑)。キャンプが好きで、行くとテントを張って5日位いるんです。出来れば1週間位行きたいくらいなんです。気持ちがいいんですよね(笑)。

キャンプ
(C)UID_photo:UID

それはお子さんの教育のことも考えているのですか。

現代はいろいろなものがキレイ過ぎて、土や泥に触れたり、虫が出た時にどうするのかなど本能のまま遊ぶことが少なくなってきているように感じます。そこで毎年津山という岡山の奥にあるんですけれど、そこに自然豊かなキャンプ場があって、そこでキャンプをするといろいろと子ども達は工夫しながら遊びます。人間本来の動物的本能というか、生き生きした状態、それは教えられるものではなくて、自分から環境に合わせて考えるもので、そういう意味ですごくいいんじゃないかと思います。

素晴らしいですね。他に趣味はありますか。

お茶ですね。先程紹介した「美孔庵 / MIKULAN」という茶室の設計をしたことがきっかけでお茶を始めたんですけれど、知らなかったからできたことというのは結構多いと、お稽古をしながら思います(笑)。お茶の面白いのは人と人との間に生まれる繊細な所作や振る舞いです。設計させていただいた茶室は口コミで広がって、京都からお家元が来たりするんです。そうすると奥様が茶会席に呼んでくださるんですけれど、知らないことが多く教わることが多いんです。会席が終わると襖の後ろに人がいて、食べ終わると箸をカチャとやるんです(笑)。建築も細かいですけど、茶道は人のおもてなしの極限なんです。今は何でもわかりやすい世の中になっていますが、そうではなくて空気で悟る阿吽の関係です。

テルメ・ヴァルス

ベネディクト教会

那覇市民会館
(C)UID_photo:UID

金城邸
(C)UID_photo:UID

金城邸
(C)UID_photo:UID

高床の家
提供:門一級建築士事務所

高床の家
提供:門一級建築士事務所

隈研吾氏

atelier - celadon
(C)UID_photo:UID

atelier - celadon
(C)UID_photo:UID

奥ゆかしいですね。最近は海外の作品を見に行くことはありますか。

6年位前にイタリアのミラノからスイスのヴァルスやバーゼルを回って、マルセイユまで下りるという結構長旅をしました。

そうするとズントーの「テルメ・ヴァルス」「ベネディクト教会」を見ましたか。

はい。話は変わりますが淵上さんは金城信吉さんをご存知ですか。

新建築にいた頃に出張でお会いしています。一緒に朝まで飲みました。もう遥か昔ですけれど(笑)。

そうなんですか!羨ましい。昨年、沖縄へ行った際に、前から金城信吉さんの作品を見たいと思っていて、「那覇市民会館」「金城邸」「高床の家」などを息子さんの司さんに案内してもらいました。すごく感動しました。ここ数年であれだけ感動したことはないぐらい感動しました。先日、絶版になっている金城さんの作品集『沖縄原空間との対話』をAmazonで買って、お正月に読んでいました。僕が生まれる前に沖縄が日本に返還されて、その沖縄の風土を憂えて、独特な文化を現代的につくろうとした人があの当時にいたんだということにとても感銘を受けました。

影響を受けているのですね。

生き方と地域に根付くものを発信しようとする力強さに、久々にビビッときましたね(笑)。

それでは将来に建築活動でやってみたいことはありますか。

隣に倉敷とか尾道があって、福山は何もない町という人が多いんです。しかし最近は福山市が「何もないとは言わせない」という言葉をつくって(笑)、PRしているんですけれど、それくらい何もないという言葉を口癖のように耳にしていました。自分がずっと福山に住んでいるとわからないんですけれど、福山を離れて東京に住むことで福山の良さが初めてわかったように、そこの良さに気付けていないだけだと思っています。これから先、気付ける人が増えていけば、これから人口が減っても、素敵な町で残り得ると思うんです。どこかへ出て行く時代じゃなくて、自分たちのホームが豊かな環境になって、東京に行ったり、海外に行ったりしながら仕事ができる。そういう環境にしていくには、やはり建築の力は大きいので、福山市民の多くの人たちに建築文化に対する豊かな心が広がってもらいたいんです。そして福山の古くいいものも残せるような。これは理想です。でも思いがないと理想も生まれません。僕は今40歳ですけれど、20年後には福山市から必要とされる人間に成長したいし、行政と一緒に町づくりに関わっていきたいというのがひとつあります。

もうひとつは。

福山だけではなくて、世界のいろいろなところに出て行くことです。今も海外で初めてのプロジェクトをやっています。世界の大御所から若手まで10人位が招聘され、中国浙江省の龍泉市で小さな村おこしをやっています。日本では他に隈(研吾)さんが行っていて、小さな青磁を展示する美術館をやっています。僕は「atelier - celadon」という中国でも指折りの青磁の現代作家のスタジオ兼住宅ギャラリーを手掛けています。

それは面白そうですね。

国広さんがコミッショナーなんです。それで抜擢してくれました(笑)。現在は工事中です。そこに行っても、頭の中には福山のことがあって、村でのさまざまな出来事や有り様に対して、これは福山でも共有できるなと常に福山と繋がるんです。そういった世界のいろいろな町と繋がる。それが建築の面白さだと思います。

インターローカルな進出ですね。プロジェクト名は何と言うのですか。

国際竹建築ビエンナーレです。竹が特産で竹を使った持続可能な建築をつくるんです。

さらに前田さんが福山の豊かさを世界に発信して、そういう持続可能なプロジェクトをやれるといいですね。今日はありがとうございました!

インタビュー風景


TOTOホームページの無断転用・転記はご遠慮いただいております。

Page Top