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様々な分野の作品
   苦心惨憺の10年で完成した「飯田橋駅」


ATLAS
ATLAS
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

地下鉄大江戸線飯田橋駅
地下鉄大江戸線飯田橋駅
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

九州新幹線 新水俣駅
九州新幹線 新水俣駅
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

新水俣門
新水俣門
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅
つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

つくばエクスプレス柏たなか駅
つくばエクスプレス柏たなか駅
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

「青山製図専門学校」の次にできたのは「K-MUSEUM」ですか。

「青山」の後、「KーMUSEUM」と「村のテラス」と集合住宅「ATLAS」が近く。それから「地下鉄大江戸線飯田橋駅」「九州新幹線・新水俣駅」「新水俣門」「つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅」「つくばエクスプレス柏たなか駅」、「上海住宅」と前後して「東京住宅」。順番としてはそんなところです。

「K-MUSEUM」と「村のテラス」は特命だったということですが、パブリックなものですよね。特命のものをやったという実績はその後に何か影響を与えていますか。

わかりません(笑い)。

でも特命で仕事がくるというのはすごいことです。
普通はコンペで設計者を決めるのではないですか。

外部の審査員が主導するシンプルな匿名のオープン・コンペがもっと増えるといいですね。プローポーザルや二段階コンペだと、そのジャンルの実績がないと入りにくくなりがちですから。

渡辺さんのところに仕事がきた理由に何か思い当たることはありますか

鉄道駅の仕事は、「飯田橋駅」が理由だと思います。「飯田橋駅」は東京都の仕事ですが、つくるのは都の第三セクターの東京都地下鉄建設株式会社です。ここには他の組織からそれぞれエキスパートが集まります。都の交通局や、旧鉄道建設公団、今の鉄道・運輸機構から来た人たちと仕事をすることになる。その中の担当の方が「飯田橋駅」の設計を大変気に入って、まだ完成前でしたが、本社に帰って、あれはいいと言ってくれました。

やっぱりそうですか。実績ですね。

何のコネクションがあったわけではありません。ただいいと思ってくれた方が、内部のキーパーソンに話し、その方々も同感し、共感された、その結果です。

ではその「飯田橋駅」について聞かせてください。

「飯田橋駅」では地下の土木構造は決まってしまっていました。ということは、大きな空間はもうできないのです。これとは違って、大江戸線の後にできた横浜のみなとみらい線の駅では、クライアントが大空間をつくろうという意思があって、初めから大きな土木空間が用意された。建築家はそこに入ってきます。伊藤(豊雄)さんや内藤(廣)さんたちが設計した駅です。ところが大江戸線は最小限の土木空間しか掘らないという原理でできている。だから長いトンネルと狭いコンコースしか取れない。大江戸線26駅の設計者はコンペで選ばれていて、建築家とゼネコン設計部が半々でした。そこで空間を大きくしたいとみんなで主張したわけです。もっと土を掘るとか、土を掘る範囲はそのままでも床をなくして吹抜けにするとか、でも一切認めてくれなかった。「もう決まっていますから、ダメです。あなた方はできたもののタイルの色を決めてください」と(笑い)。本当にそう言われました。

タイルの色を決めるだけ・・・・・。

しかも予算も極めて少ない。まんべんなくタイルを貼ったら、それだけで使い切ってしまう。これでは文字通りタイルの色決めしかできない。このまま行っては何もできない。何かないか。しかし名案は簡単には出てきません。ある時、先行して進んでいる土木工事を見に行ったのです。そこで初めて、必要最小限のサイズとはいえ、土木空間は意外に迫力があることを発見しました。建築にはない力です。これを使わない手はない、と思いました。
しかし普通の駅ではその土木空間は見えませんね。天井や壁で隠れてしまうからです。では、仕上げをしなかったらどうか。仕上げをしなければ、土木空間の広がりを生かすことができるし、しかも同時にコストを削減することができるはすです。そうすると必要なところに集中的に予算を配分できる。これは空間の広がりを得ることと、予算上の自由度を確保することの、一石二鳥の名案と思いました。
しかし、これを実現するのは大変でした。まず仕上げをしないことを納得してもらわなければなりません。それから仕上げ背後にはダクトや配線や樋などの臓物がいっぱいですから、これを何とかする必要がある。普通は仕上げという皮膚の下に隠れている内臓が、みんな出てきてしまう。内臓を鍛えてシェイプアップする必要がある。クライアントに仕上げをしないというと、即座にダメだと言われました。「仕上げはすることになっている」と言うのです。鉄道は仕事ごとに別々の組織体のようなもので、土木、軌道、電気、通信、信号、機械、建築、等それぞれ分かれています。だから各担当者と責任者に個別に説明し、説得しなければ、提案は受け入れられない。幸か不幸か、期間は10年もありましたから、ダメだという理由に応える案をつくっては示す、ということを繰り返して、地道に説得を続けていくと、次第に賛成してくれる人たちが出てきたのです。

大変な作業ですね。
換気塔
換気塔
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

ウエブフレーム
ウエブフレーム
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE


土木の人たちにとっても、普通は隠れて見えなくなってしまう自分たちの仕事の成果が利用者に見てもらえるわけですから、これはいいことなのです。それで最終的には賛成してくれた。そこで大きい空間を確保し、なるべく仕上げをしない、そのお金を投入して、「換気塔」「ウエブフレーム」をつくる(笑い)。そうじゃない限り、これらをつくる費用は出てこない。みんなこんなお金のかかりそうなものがなぜできたのかと聞きますが、お金はかかっていない。全体予算はまったく変えていません。むしろ先行した駅に比べて単価はさらに低いのです。ただ工夫した。それも膨大に。だから普通以上にお金がかかっているのは建設費ではなくて、実は設計事務所内部の労力なのです。でもその増加分の対価は支払われない。今回もまた、恵まれませんね(笑い)。それで施主の出費、つまり税金の支出はまったく増やさずに、公共価値が得られたわけです。

それは素晴らしい。

「飯田橋駅」は延々と長くて深いトンネルの駅です。とても長いこの駅の階段の空間を楽しくしようということで、何か張ったら狭くなってしまいますから、透けたものでリズムをつくろう。それから地上には地下駅全体の空調用の巨大な空調機と換気用のタワーが必要になる。どうせタワーをつくるなら、そこで「ウエブフレーム」が成長して、樹木になるようなものをつくろうと。それが「換気塔」(WING)です。

「ウエブフレーム」というのは、どういうところから発想されたのですか。

ここで最初の生物の話がやってくるわけですね。木の根というのは、地面の中でただデタラメに成長するのではなくて、土の柔らかいところとか、水やミネラルとか、重力の方向とかを探知しながら成長していきます。だから水や重力が条件ですが、後は自由です。同じように「ウエブフレーム」も人の頭に当たらないとか、枝分れは5本までとか、角度が何度以下にならないとか、そういうルールを敷いた。それと、広がりや縮小のリズムなど、設計者の意図も、柔らかいルールとして入れる。後は自由に成長していくというプログラムを開発したわけです。自然の生態のように守る条件と後は自由だという仕組みで、一見ランダムなように見えるけれど、全体としてはバランスのとれたものができる。さらに構造力学上、例えばこういうフレームに荷重をかけるとこういう応力分布が出ると、でも普通は一番応力の太いところで大丈夫な材料でつくってしまいます。そうではなくて、この形なりの太さが変わるような、自然の植物とか、骨とかはこういう仕組みでできているわけで、こんな構造ができないかという考えでした。このプログラムは「換気塔」では完成できなくて、後になって「新水俣門」の時に実現しています。京大の大崎純さん、システムエンジニアの千葉貴史さんと一緒に開発したこのプログラム「形力‐1」と、その後継の「形力‐2」は、ウエブサイトで公開していますから、誰でも使えます。

「ウエブフレーム」が「換気塔」に成長したわけですね。この形はすごいですね。

あれは中に空気取入れ口と排気口、それに大型室外機があるので、完全に閉じてはいけないのです。でも周囲との関係で騒音をある程度閉じ込める必要もある。結局、閉じると開くの矛盾した要求に応えるという点で、意外に難しい。それで、何枚かのリーフを重ね合わせた。「換気塔」は、「青山製図専門学校」の直系の子孫のようなものかもしれません。

ファイバーウエイブ
ファイバーウエイブ
撮影:MAKOTO SEI WATANABE/
ARCHITECTS' OFFICE

「K-MUSEUM」の「ファイバーウエイブ」は建築と離れてつくっているのでしょう。

そうです。「ファイバーウエイブ」は風にそよいで揺れるのですけれど、建築の設計では普通硬く強いものが要求されます。風で揺れない、地震で壊れない、そういうのをいつもやっていると、そうではないものをつくりたいという気がしてくる。風に揺れる草とかを見ていると、あれは風が吹くと自分が曲がるわけです。一見負けているようだけど、決して負けていない。風をやり過ごしたらまた元に戻る。戦わないけど、負けないというキャラクターです。人工物でそういうものができないかと考えました。最初はステンレスでつくろうと思ったのですが、計算すると限界を超えると折れてしまいます。カーボンファイバーだと、それが可能だとわかったのです。

あれは単体で売っているのですか。

これはアートワークですから、依頼があればつくります。来年には、アメリカ中央部の市からの依頼もできあがる予定です。カーボンファイバーは少ロットでは生産できないので、ある程度まとまった規模が条件です。


  
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