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   ブリューゲルとキリコにぞっこん


忙しい藤森先生の趣味は何ですか。

特別ありませんが、散歩は好きですね。

それも路上の観察になってしまうのではないですか。

散歩をする時には、植物を見るのが好きです。本当は散歩が面白いような街が日本にあってほしいんですが、ほとんど全滅ですね。ヨーロッパの田舎街は植物があって、街がきれいで、見て面白いもん。

僕も家から駅までの道で点を付けていて、グリーンを道路側に植えていない家は0点です。全然グリーンを植えない家ばかりになったら都市は荒廃します。本当は生垣が最高ですけれど・・・・・。

生垣は無理でも何か緑を置くべきですね。

趣味は散歩だけですか。

もちろん美味しいものを食べるのは好きだけど、高血圧だしね(笑い)。

お酒はどうですか。

子供の時から飲まないです。頭の中で脳が醸造しているんです(笑い)。脳内酒造です(笑い)。

自給自足ですね(笑い)。音楽とか、絵画とか、映画とかはどうですか。

絵とか、焼き物とか、造形は好き。

展覧会にはよく行きますか。

相当行きますね。

好きな作家はいますか。

割合オーソドックスな人が好きでね。ブリューゲルとか、キリコとかが好きです。キリコの「通りのメランコリー」という絵は見た人がいないんです。僕はあの絵を見たいと思い続けて、キリコがあるところは大体回ったんですけれど、どうしてもどこにも出ないんです。何年か前にキリコの総作品集が出て、来歴を見たら、最後に個人で持っていてわかっているのは、デュシャンです。デュシャンが手放して、ニューヨークの誰か個人のところにあるんです。最後にあの絵が展覧会に出たのは1940年代です。ということはほとんど見たことがある人はいないんですよ。それがわかってキリコ・ファンとしては安心しました(笑い)。

先生もかなりの凝り性ですね!誰か個人が持っているのですね。

ロックフェラーでも持っているんでしょうか。ブリューゲルとキリコは普通見れるものはほとんど見ています。

何か特別に好きな理由はあるのですか。

小学生か中学生の時に図工科の教科書で白黒で見て一番記憶に残ったのが「通りのメランコリー」でした。それ以来ずっとです。ブリューゲルはオランダ・ルネッサンスの巨匠ですけれど、「雪の中の狩人」なんて超有名です。僕はルネッサンスの絵でいうとキリスト教系のものが、何とも耐え難いんです。だからラファエルとかも大嫌いなんです。なぜかというと、登場人物が全員こっちを意識して演技しているんです(笑い)。ところがブリューゲルの絵の登場人物はこっちを見ていないことに気付いたんです。それで違う世界を覗いているような気がした。タイムマシンに乗って行って、突然覗いているようで、感動したんです。ルネッサンス的な視線ではないんです。どうやってああいう視線を獲得できたんだろう。素晴らしい。こっちを見ていないですから、安心して見ていられます(笑い)。

「路上観察学会」のメンバーは、絵画の観察にも鋭い!そう言われてみると、みんなこっちを見ていますね(笑い)。

人が描くんだから見ているように描くのは仕方がないけれど。一番派手なやつがグレコで、神様のために身までよじって見ています(笑い)。画面の登場人物がこっちに視線を向けていないと感じたのは、ブリューゲルが初めてです。ブリューゲル以降はそういう人がいません。野菜のようなものすら、明らかに意識しているんだよね(大笑い)。

野菜がですか。

花や野菜が描いてあるものがあるじゃない。あいつらだってこっちを意識しているんですよ(笑い)。気持悪いですよ(笑い)。

ビルバオ・グッゲンハイム
ビルバオ・グッゲンハイム

それは面白い発想ですね。今のお話を聞いていると、現代建築などはどうですか。嫌いですか。

嫌いではないですよ。僕の友達はみんなそうですよ(笑い)。日本の代表的な前衛ですよ。

海外の建築で気に入っているものはありませんか。

例えば「ビルバオ・グッゲンハイム」なんかを見れば感動しますよ。

先生はインターナショナル・ヴァナキュラーですから、現代建築は苦手かなと。

そんなことはないですよ。ただ現代建築について言うと、基本的に行き詰りを感じます。はっきり言っていいですか。僕らが学生時代、丹下さんはもういない人だったんですよ(笑い)。どんな意味もなかったわけです。時代がどんどん進んでしまっているから。今、磯崎(新)さんはいくつだと思います。80歳近いですよ。だけど磯崎さんは自分が古びたなんて全然思っていないですよ。原(広司)さんもそうです。それはデザインだけでなくて、頭もそうです。ということは時代が止まったんです。止まらない限り80歳で現役なんてあり得ません。だから本当に磯崎さんや原さんは安心しています。要するに自分達は置いて行かれてないと思っているわけ。まだ乗り越えられて行っていないわけです。

なるほど丹下さんの時代は時代がもっと速く流れていたのですね。

どんどん流れていました。僕らの頃には「丹下さんまだやっている」という感じでした。磯崎、原、槇(文彦)、あの辺に現役感があるでしょう。僕らの頃、前川(國男)さんなんて、丹下さんよりもっとないと思っていましたから。今はそういう感じが全然ないでしょう。実は止まっているんです。全体に止まっている中でグチャグチャしているから、彼らが考えたり、やってきたことが古びていないんです。僕は60歳まで生きてきて、時代の動きを見ていると思います。

ところで先生は携帯電話は使っていますか。

使わない。家に置いてあります(笑い)。

ではインターネットやメールはしますか。

しない、しない(笑い)。「路上観察学会」では、ゴルフやったら破門(笑い)。乗れるのは自転車まで(笑い)。車の免許を持っている人は誰もいない(笑い)。使えるメディアはカメラまで(笑い)。自転車とカメラで止まっているんですよ(笑い)。だから20世紀の後半の頭くらいで止まっているんじゃないかな(笑い)。

ではiPodなどは使っていませんね。

名前も知りません(笑い)。

Suicaは知っていますか。

Suicaは使っています(笑い)。

お財布携帯は知っていますか。

知らない。そのうちに宇宙から物凄い彗星か何かが飛んでくるんだよ。そうすると磁気嵐が起こるんです。皆さんの頭の中は、全滅ですよ(笑い)。デジタル情報は全部消えてグチャグチャです(大笑い)。

彗星が地球に衝突したらヤバいですね。

衝突しなくても、磁気嵐が来たら危ないです。

ハレー彗星が来ると子供の頃に騒ぎましたけれど・・・・・。

少し前にも来ましたね。流れ星がバンバン、バンバン起こるというのはすごいと思ったね。感動しました。1度見れて良かった。

将来の夢は。

将来って、もう60歳だよ。

定年はいくつですか。

63歳です。

定年後はどうしますか。

あまり将来のことを考えてやってきたことはないんでね。やっているうちに生まれてくる。それも他動的に生まれることが多いんです(笑い)。設計だってそうだから(笑い)。

先生は間口が広いですから来る率が非常に高いですね。

アンテナがデカイから(笑い)。

普通の東大の先生とは全然違いますから。

ここ30年位はあまり飽きるということはなかった(笑い)。

最後までユーモラスなお話をありがとうございました。
  
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