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團さんの作風
   ユニバーサル・フォームのコンセプトで地形的建築を設計


團さんは海の近くで育ったせいなのか、島や海の見えるサイトが多いですね(笑い)。「八丈島のアトリエ」「新島グラスアート・センター」「佐渡ボトリング工場」「能美島ゲストハウス」が島で、「ウトコリミテッド工場」「土佐清水国民宿舎」などが海の見えるサイトです。これは偶然ですか。

「新島グラスアート・センター」は事務所を始めた頃の一番思い出深い作品ですね。その他にも「日吉ダム周辺整備計画」や台湾の「日月潭」など、海でなくても水に関係するものが多いのは事実です。しかしこれは偶然だと思います。
八丈島のアトリエ 新島グラスアート・センター 佐渡ボトリング工場
八丈島のアトリエ
撮影:藤塚光政
新島グラスアート・センター 佐渡ボトリング工場
撮影:高山幸三(Kozo Takayama)
ウトコリミテッド工場 土佐清水国民宿舎  
ウトコリミテッド工場 土佐清水国民宿舎
撮影:高山幸三(Kozo Takayama)
 

また「N-house」「太子堂の家」「吉祥寺の家」などの住宅作品は別として、先ほどの「八丈島のアトリエ」「新島グラスアート・センター」「佐渡島ボトリング工場」をはじめ、「京都市西京極総合運動公園プール施設」「日吉ダム周辺整備計画」「上林暁文学記念館」「INFINITAS」など、何らかの形で大地に埋もれる部分があるトポグラフィックな作品が多いようです。これらはどういう発想からですか。

20世紀の建築はフラットな地平にオブジェとして建築が構想されたものが多いんです。これはギリシャ・ローマの古典的建造物からモダニズムに至るまで、一貫して見られるヨーロッパの地勢学を反映したものだと思います。モダニズムの揺籃期に重要な役割を果たした場所には、オランダのようにフラットな地形が多いですからね。しかしこの発想は、山や起伏の多い東洋、ことに日本においては地形の改変や自然破壊に繋がりかねません。日本には比叡山や高野山の伽藍配置など優れた実例もあります。僕は建築を人間と自然の対話の一形式であると考えているので、建築のもつ自己変形能力や、地形をつくり出す能力を重視しています。
N-house 吉祥寺の家 太子堂の家
太子堂の家
撮影:高山幸三(Kozo Takayama)
N-house

吉祥寺の家
京都市西京極総合運動公園プール施設 日吉ダム周辺整備計画
京都市西京極総合運動公園プール施設

 
上林暁文学記念館 INFINITAS
上林暁文学記念館
撮影:高山幸三(Kozo Takayama)
日吉ダム周辺整備計画
撮影:藤塚光政
INFINITAS

なるほど、そういうわけで、團さんの作品には外部階段が頻出するのですね。外部階段は好きなヴォキャブラリーなのですか。

もちろん好きだからやっているという面もあります。しかし外部階段は、建築の一部である場合もあれば、地形の一部として登場する場合もあるので、建築と大地を結び付けるエレメントとして、その可能性を追求したいと考えた結果でもあると言えます。

ヴィラ・マラパルテ
ヴィラ・マラパルテ

大野大橋
大野大橋

樋口忠彦氏
樋口忠彦氏

ノリの図
ノリの図

デ・ステルの空間構成(Doesburrgの絵画)
デ・ステルの空間構成
(Doesburrgの絵画 )

團さんはアダルベルト・リベラの「ヴィラ・マラパルテ」が好きではありませんか。海に張り出した岬の上にあって、大きな外部階段が屋根まで延びています。團さん的な建築だと思いますがどうでしょうか。

あれは住宅でしょう。けれども住宅の内部空間の紹介があまりされていないのが面白い。断崖の上に人間がどのような“場”を構築しようとしたかといった、住居内部の人間生活とは別のスケール感を示している点が好きですね。

土木的、ランドスケープ的要素を含んだ仕事が多いのは、やはり学生時代の勉強に関連しているからですか。

大学院の槇研で学んだ時には、建築と都市デザイン、とりわけ都市のグラウンドの構築に関心がありました。アメリカから帰ってきてから、新潟で「大野大橋」のコンペがあって、1等を取ったものの実現しませんでした。しかし、その時に審査委員長だった樋口忠彦さんと知り合うことになり、「日吉ダム周辺整備計画」をやることになりました。「大野大橋」がキャンセルになって諦めていたら、樋口さんから「團さん、橋がダメなら、ダムをやってくれませんか」と連絡をいただいて、それが土木と出会うきっかけでした。「日吉ダム」では日本建築学会賞の業績賞もいただいています。土木分野では当然のことながら、トンネルを掘ったり、切通しをつくったり、ガンガン土を移動していて、文字通り大地(グラウンド)にメスを入れることがテーマでした。それを見ていて、人間が大地に対して行うああいったことは一体何なのか、自然破壊になってしまうケースもいっぱいあるわけだけれど、それも一種の造形行為であると思ったんです。僕はどちらかといえば、土木行為に見られる造形的な側面に興味をもったんです。都市のグラウンドは建物。土木のグラウンドは大地。両方のグラウンドが自分の中で合体したのはこの時です。

確かに建築家で土木的な側面に興味がある人は少ないようです。

これは目黒新富士で、江戸に200カ所あったという小さな富士山のひとつです。当時、築山を近景にして、遠景の富士山を見るというのが流行っていました。今は10カ所くらいしか残っていませんが、これはランドスケープ・デザインです。全部が土で、フォルムをつくる、あるいは土に穴を空ける。「ノリの図」は全部建築物です。でもそれをスイス・チーズのようにくり抜いたりしています。ローマの都市では、建築物をカットしたり、くり抜いたりということがよく出てきます。図と地が反転しているんです。そういうことは何なのだろうと考えていくうちに、これは建物ができた後に、ナイフで切り抜いているのではないだろう。やわらかいものと見立てて、切ったようなデザインができるのだろう。それは頭の中でしか起こらない話だから、概念物質というのがあるんじゃないだろうか。例えば「ナボナ広場」ははまき型をしているんだけれど、建物そのものの外形輪郭は成り行き任せに土地と同じ形をしています。丸い建物や三角形の建物はどこにもありません。全部敷地のぎりぎりいっぱいに建っています。形はすべてくり抜かれた広場として出てきています。日本の都市景観は塀の文化ですが、それが反転したファサードをもった文化に気付き始めました。

そういった考え方に到達したことが團さん自身をユニークな建築家に仕立て上げているのでしょうね。

建築に対して切ったり、穴を空けたりは、学生でもやっていることです。そういうことが、土にも、建築物にも起こっているということになると、このふたつを複合配分で何かつくれないかと考えるようになりました。つまり土木と都市というものが、融合できる。こんな異形の複雑な都市の敷地の中に、まるで瓶の中のピクルスが液体があることでフィットしているのと同じようにフィットしているのです。物質には気体、液体、固体という3体がありますけれど、モダニズムは基本的に気体と固体からしかできていない建築物だと思うようになりました。液体が完全にオミットされています。これはモダニズムの典型的な美学をもつオランダのデ・ステイルの空間構成ですが、気体と固体からしかできていません。地形などの自然環境とフィットしない理由は、気体と固体からしかできてないからだという結論に達したんです。そこには液体に相当するユニバーサル・フォームという概念を導入しない限り、これからの建築は絶対に地形などにマッチすることはできない。あるいは街並みが崩れてしまったところをインフィルすることができません。

そのユニバーサル・フォームのコンセプトを用いれば、大地密接型の建築が可能になるわけですね。

今までですと、山のところに1万m2くらいのものを建ててくれというと、土木の人がやってきて、バカッと削ってしまいます(笑い)。そうするとその土はどこかの埋立て地に使われます。大きな建物が山並みを崩すことになっても、建築家が「もっと小さくしたほうがいいですよ」と言った途端に首になって、違った建築家が選ばれるというのが現実だから、どうしてもそういうものをつくらざるを得ない。それを止めて、こういうところを修復する。山並みの中にちょこっとガラスの箱のようなものが出る。それならばバランスも崩しません。図と地の両方、つまりユニバーサル・フォームからできた部分と建築的な部分の両方から成り立つ建築物をつくらない限り、自然地形との融合はできません。

ユニバーサル・フォーム
ユニバーサル・フォーム
ユニバーサル・フォームの解説図

自然のトポグラフィにフィットする建築は、環境保全的な見地からも今後ますます要求されるでしょう。

20世紀の近代建築の主役は空間です。ミースのユニバーサル・スペースでは空気が流動していて、そこでユニバーサルなことができます。21世紀の建築では、ユニバーサル・スペースも引き続きやりながら、ユニバーサル・フォームが主役なっていかなくてはいけません。なぜそう思うに至ったかは偶然で、僕は土木のことに巻き込まれて、土の挙動を見ていたということと、もともと槇研などで都市について勉強をしていたので、それらが頭の中で繋がって、それで実現したのが「京都市西京極総合運動公園プール施設」です。

「京都市西京極総合運動公園プール施設」はどういう経緯で仕事がきたのですか。

仙田満さんとの協同のコンペでした。3.6haの敷地があって、その側面を5mの鉄道が通っていて、鉄道の向こう側に広い公園がありました。この鉄道があったために真っ平にしてしまうと、敷地側から公園が見えなくて、視覚的に繋がらなくなってしまうんです。京都市のスイミングプールのコンプレックスなんですけれども、プール面はどうしても±0のグランドレベルに設定しなくてはならないんです。そうするとその地下にかなり大きな機械室を設けなければならない。それによって削られる土が90,000m3あることがわかりました。結局、その土は捨てないでここで使いました。要求されている建築物が3ha、敷地が3.6ha。3haのプール、ジム、駐車場などの平均階高を6mと設定すると、180,000m3の具ができるんです。180,000m3の具と90,000m3のルー、そうすると270,000m3のカレーができます(笑い)。具は建築物で、ルーは土です。270,000m3のカレーから発想を出発させると、ドロドロしていますから、さきほどの話のように敷地にフィットします。この話をすると、「ドロドロとしたものをどういうふうに形として決めたのか」と質問されます。それはもちろん煮凝り化したわけです(笑い)。煮凝り化する時には、もちろん外部からの与条件と内部からの与条件を考慮しています。そうすると半建築、半地形のものができ上がります。ユニバーサル・フォームのひとつの応用例です。


  
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