(http://www.americanrock.com.cn/PostModern/index.htm)
インタヴューの前に―
  標準的な民間マンションを探して
 
物件データ
インタヴュー1
インタヴュー2
インタヴューを終えて


●インタヴュー2

相手:方振寧(文化評論家、1950年代南京生まれ、88年から日本滞在、2000年から日中往復)
場所:後現代城のご自宅兼事務所にて(朝陽区百子湾路16号)
日時:2004年12月11日

方さんは日中を行き来しながらアートや建築、デザインの方面で橋渡しをしている評論家である。日本に帰化していて日本語もとても上手。インタヴューはすべて日本語で行われた。お住まいは2期部分にあって、1期とは少しちがうつくりになっている。また「後現代城」はスケルトンの状態で入居者に引渡しなので、各住人が施工会社を見つけてきて施工する。方さんも自分で設計図を描いて施工隊を見つけて施工したそうだ。インタヴューにうかがったときは工事がほぼ終わっていて、出来上がった内装を見ながらの話になった。

ここにくるまでの経緯

松:ここをなぜ購入することにしたのか、その選択基準から伺いたいですね。

方:第1の理由は北京のCBD(中央ビジネス地区)に近い、それが大きいですね。そしてCBDのそばだけれどCBDの中ではない。だから価格が安いんです。ここは内装なしのスケルトン渡しで1平米6300元くらいです。それが1つの理由。CBDに入ったとたんに単価が平米1万元を超えますから資金力の上でこれは難しかった。

松:急に上がっちゃうわけですね、販売価格が。

方:そうそう。僕の仕事はメディアや文化に関係していますからCBDに近いのはとても重要なんです。テレビ関係や雑誌関係の人と会って打ち合わせをするのはどうしてもCBDのあたりになります。それがここを選んだ2番目の理由かな。
3番目は空港に近いということ。第四環状線のそばですぐ空港に出れる。僕は日本の住まいが横浜にあります。日本と行ったり来たりするのに空港に近いところを選んだほうがいい。市内の渋滞は本当に深刻ですから、これくらい外側の方が便利です。
4番目は外観のデザイン。例えば北京の北東部には望京地区という、やはり海外帰りの人が多く住む場所がありますけれど、あそこには気に入ったデザインの物件がなかった。他にも例えば建外SOHOはデザインはいいんだけれど、CBDの中だし僕にはちょっと高すぎるんですね、買えないですよ。この物件は外観を見ると白とか黒とかグレーとか、色使いがやさしい感じですよね。モデルルームを見たけれどそれもよかったし、ロゴとかサインや印刷物やポスターなんかもスマートでデヴェロッパーのレベルが高いんだと思いました、それで安心したんですね。実際内部も白が基調で気に入ったし。あとは名前もいいですね、「後現代城」は名前も覚えやすい。

松:なるほど。

方:たとえば「現代城」は有名でしょ。そのまま訳せば「ポストモダン城」でしょ。私はアーティストの出身だけれど、この名前はすごくわかりやすいと思ったんです。文化的な意味のある名前に思えたわけです。だいたいそんなところでしょうか。

松:ちなみにこの建物全体の設計はどこの設計事務所がやったかご存知ですか?

方:カナダの会社が関わってたり、いろんなところが参加したみたいですよ。詳しいことはよくわからないけれど。デヴェロッパーは上海の会社だと聞きました。ああ、あと、この建物の高さがそう高くない。せいぜい16階です。あとパブリックスペースが多いというのもこの物件に決めた理由ですかね。それからここに住む人は白領(バイリン=ホワイトカラー)の人が多い。単身の人が多い。テレビ局の人やデザイナーが多い。それはこの辺に停まっている車を見ればわかります。外車が多いし。


1期であった住棟を連結する半内部廊下。こういう公共空間の充実はこの住宅区の特徴かと思われたが、2期以降ではつくりが省略される部分が多々見られた。デヴェロッパーは売れたので強気になっているんだろうか。

松:とくにこの6号楼を選ばれたのには何か理由がありますか?南向きの3階の物件なわけですけれど、それにもお考えがあったんでしょうか?

方:以前私は天津に行く用事があって、そのとき車からこの物件が見えたんです。それで、「面白そうだ」と思ったのが最初だったんですね。2003年の2月ごろかな。そのあと徐々にSARS騒ぎが本格化して北京にしばらく来られなかったんですよ。そのころ第1期は完売しちゃったんですね、人気があったみたいで。日本からこっちに来られたころには第2期もほとんど完売していて、残っていた中からこれを選んだんですね。資金力のこともあってあんまり上の階は高いので買えないし、北側は小型住戸しかないので、南側の3階になったんです。
北側で思い出したけれど、そういえば最近はこの近くに華貿中心という高級ホテルとか住宅が入った地区ができてきていて、その南側は大きな体育施設と公園が作られるらしいです。この住宅区の北側に面したあたりになるんですけれど、その体育施設が見えるように、この「後現代城」の北側のエレベータは全部ガラス張りのシースルーエレベーターになっています。

松:そうですか、この敷地の北側は今は北京東駅っていう大きな貨物駅ですけれど、あれが立ち退くんですかね。

方:そうです、あの辺が公園になると聞きました。資産価値を高めるためにエレベータがガラス張りになっているらしいです。

松:去年の2月にこの住宅を初めて見かけて、実際に契約されたのはいつごろですか?

方:去年の10月ごろだったと思います。

松:じゃあ今からもう1年以上前ですね。

方:そうです。契約で面倒だったのはですね、私はパスポートは日本のものなんです。中国では外国人になるわけですね。銀行でローンを組むことは外国人でも今は可能なんです。しかし一般の中国人と比べると頭金が高くなるんですよ。そのぶん分割払いの期間は短くなって15年ローンになりますけれど。
それからもう1つ面倒だったのは、最初は中国工商銀行が取引銀行だったんですけれど、手続きの途中で突然「宏観調控」という、つまりが国の経済への介入があったんです。今は経済の発展が早すぎるということで国のコントロールが入ったんですね。工商銀行は外国人にローンを組むことを一切停止したんです、突然。しかたないので中国銀行に連絡してそちらでローンを別に組みました。

松:他の中国人の住人たちはどうだったんですか?

方:彼らは普通にローンを組めたはずです。この物件の指定銀行の工商銀行が外国人相手のローンをやめてしまったので、困ったのはこの物件を買った外国人ですよ。しかも銀行間の連絡も悪いし、ある日突然もうローンは組めないという通知があったんです。ひどいですよ。
実は今年の1月ごろにこういう「宏観調控」が入ることを別の場所で取材をしていて聞いてはいました。僕は仕事の上でたまたまこういうことが起こるかもしれないという雰囲気はつかんでいたんですが、普通の人だったら本当に寝耳に水の話だったと思いますね。僕もだいぶ銀行には怒りまして、どうして事前に細かい情報を流してくれなかったのかとクレームをつけました。


使用状況

松:ここは今何平米ありますか?

方:89.6平米です。

松:建築面積で?

方:そうです、実際の使用面積は67平米です。さっきビルの高さが低くてパブリックスペースの面積が大きいといいましたけれど、そのぶん利用率が低くなっちゃうということでもあります(笑)

松:購入価格は先ほどおっしゃっていた6300元という単価に建築面積である89.6平米をかければいいわけですね。すると・・・

方:そうです。ローンを組んで58万元くらいです。

松:頭金はどれくらいになりますか?

方:21万元くらいでした。

松:ここをお借りになっている以外に借りられている設備はありますか?駐車場とか。

方:駐車場は地下にあります。月400元です。まだ完成していないのでみんな地上に車を留めていますけれど。前住んでいたマンションも地下に駐車場がありましたが、地下に直接エレベータがつながっていませんでした。1階からは階段で降りていくんですね。評判が悪かった。ここはそんなことはないと思います。

松:この物件は公共緑地が多いというのは歩いてみて実感しているんですが、集会所などの公共施設ももうできているんですか?

方:これからですね。だからまだ不便なところもあります。ちょっと友人とこの近くで会おうにもまだコーヒーショップ1つないし。新聞雑誌を買うところもない。静かで住む環境としてはいいんだけれど、不便なところもあります。

松:まあしかしその問題はいずれ時間がたてば解決するんじゃないですか。これだけCBDに近いわけだし。

方:まあそうですね。道路も拡幅されてきれいになると思います。この北側の道路に沿っていくつか新しい住宅街が整備されているし、これから延びる地区だと思います。望京地区の問題は、もう六十万人もの人が住んでいて、文化人も多く住んでいますが、交通渋滞がかなり深刻だということ。あんなに人がたくさん住んでいるのに四環に出る道路は1つしかない。いつも混んでます。

松:こちらのご近所付き合いはどうですか?向かいの住人をご存知ですか?

方:いやわからないですね。

松:入居率はどうでしょう?ここは2期ですけど、1期なんかはほとんど入居されているんじゃないですかね、外から見るとカーテンがほとんどの住戸に入っているし。

方:第1期は入っている人が多そうだけれど、第2期は半分もいってないんじゃないでしょうか、住んでいる実感としては。買ってレンタルする人が多いんだと思います、投資目的が増えているんでしょう。どこも内装はもう済ませているんじゃないかな。いつでも貸せる状態にしてまだ住人が決まっていないという住戸が結構あると思います。半分以上空室でしょう。夜見たらわかります。

松:ここは使用面積で70平米近くあるわけですが、方さんの職場兼住居と考えていいですか?つまりSOHOだと。

方:そうですね。

松:SOHOでもつまり、方さんお一人の住居と考えたほうが良さそうですね。この間取りだと。

方:そうです、家族は横浜にいますから。ここでは寝室を最低限にしたいと思ってました。だからベッドはなし、衣類箪笥もなし、かわりに床を上げて床下収納にしたり、押入れのような壁収納を作りました。もともとの引渡しのときは壁がいろいろ入っていたんですが、構造でない部分はみんな壊したんです。個人的には桂離宮のような和風の空間が気になるんです。僕が最初に日本に行ったとき、磯子なんですけれど、和風の空間が好きになりました。半透明の素材を使っているのは節約の意味もあって、昼間なら外光が入ってくるから電気をつける必要がないでしょう?かわりに夜は灯篭になるからすごくきれいだし。

方邸平面図、バスルームの南側が比較的大きなシェアオフィスで、その西側で南外壁に面するのが方さん専用のワークスペース。その北側でキッチンの南側が床をあげたカーペット敷きの寝室コーナーになっている。

松:南側の2部屋のうち、小さいほうが方さん専用のワークスペースで、大きいほうは友人とシェアするオフィスにするとか?

方:そう考えています。

松:その北のカーペット張りの部屋が寝室なわけですね。

方:そこに押入れがあります。寝室の床は少し上げているから押入れの中は寝室から見ると低くなっていて、朝起きると布団をそのまま転げ落とせばいいようになっています(笑)。

寝室(左)とその北側の収納内部(中)、日本の押入れみたいに作ってある。ドアはパンチング。床下は収納にしている(右)

松:なるほど。

方:押入れの引き戸はパンチングがしてあって中に照明が仕込んであります。ですから夜電気をつけると中から光ってきれいです。音楽を聴きながら星を見るような感じになります。

松:ここでは今後どういうお仕事をされていくんですか?メディアの仕事というと執筆作業が多いんでしょうか?
 
方:そうです、それが中心です。それでここは書架とCD架が多く作ってあります。それから私はアーティストの出身で、このCD架に似た作品を作ったことがあります、けど機能性はなかった、芸術作品ですからね。しかしこのCD架は機能性があります。ここは事務所空間なわけですけれど、そういう一般の空間の中でアートの雰囲気を増すことができればなあと思ったわけです。
それから今まで私が作ってきた作品はミニマルっぽい白が多くて、あまり色を使わなかったんです。しかしここはSOHOで一日のほとんどの時間をここですごすわけです。ですから寂しいとか冷たいとかという感じがないように、緑のライトを入れました。それから照明についてはなるべく照度が均等になるように照明計画を立てています。僕はダウンライトのような点の照明はきらいなんです、角が暗くなってしまいますから。ですから全部細い蛍光灯を使っていて、各部屋の中央に直線で通して設置しています。天井伏図を見ればモンドリアンの絵のような感じで構成的になっているはずです。照明のことをよく考えたんですね。

トイレの壁とCD架(左)、樹脂製まな板の材料を使っているので光が中から透けているのがわかる。シェアオフィスから外部を見る(右)、壁上部の緑色の間接照明、まっすぐ通した白色の細蛍光管が見える。左側の書棚にはこれから引き戸がつくとのこと。

松:なるほど。

方:材料についてもいろいろ考えました。色が近い素材どうしを組み合わせたいということで床のフローリングも白にしました。これから壁の書棚の前には引き戸がつきます。長いところで6mの長さがありますが、色でグラデーションをつけようと思っています。白からグレーへ6階調の変化をつけます。アメリカ製の防火板で作ります、アメリカ製は色が豊富なので。中国製のものは色が少ないし発色がよくないです。建材は外国製が多いです。カーペットもアメリカ製ですね。外国製品を選ぶ理由ですが、単に外国のものが好きだからというわけではなくて、品質の問題です。

松:この物件は内装していないスケルトン渡しでの引き渡しと聞いていますが、去年の10月に契約されて、工事を始めたのはいつからですか?

方:今年の10月8日でした。

松:そうすると契約してほぼ1年後に工事にとりかかれたということですね。

方:そうです。契約は竣工前に済ませていますから。今ちょうど2ヶ月でようやく終わりそうなわけです。これでも予定よりはだいぶ遅れています。なぜかというと最初に選んだ施工隊がめちゃくちゃで、別の人に代えたりしたんですね。

松:床工事、書架工事、照明工事、キッチン工事などそれぞれ分けて施工隊を見つけてきて発注したんですか?

方:1つの施工隊にまとめて発注しています。江蘇省の人たちの施工隊です。それぞれの工事にこちらから注文を出して全体の統一感が出るように工夫しました。それから一部既製品もまぜています。たとえば厨房器具などは既製品のほうがいいですから、IKEAでユニットを購入しています。書架にこれからつける引き戸もやはりレールとか既製品を使うので別の業者に発注しています。

松:内装工事費でどれくらいお金がかかりましたか?

方:10万元近いですね。書架前の引き戸だけで1.8万くらいするし、床のカーペットが4千5百元、トイレまわりのこの壁は、半透明の樹脂ですけれど、1枚720元します。1mx2mの寸法だけれど。

松:これって面白い材料ですけれど…結構高いんですね。ああそうか、樹脂製のまな板の材料ですね(笑)。

方:そうそう。普通の市場で買えるんです(笑)。こういう素材は今までつかったことがないから、作りながらいろいろ試してみたんです。

松:もう2ヶ月工事をされていて、施工中はそばの弟さんのところに滞在されていたそうですね。工事はほとんど終わられているから、もうすぐ入居ということになるんですか。

方:おそらく1週間後には引っ越してきていると思います。もう家具も大分そろっているし。ああいう色付きのクッションもIKEAで買いました。床が白いからああいう色がアクセントになると思います。

松:すでに本も入ってきているけれど、これからこの書架はみんな本で埋まるんですか?

方:今こっちにある本はほとんどこの寝室の床下にしまってあります。まだほとんどの資料は日本にあるんですが、徐々にこっちに移したいと思っています。これからは北京の仕事が主になるし。10年前は中国に帰りたくないと思っていたので日本にすべての資料を置いていたわけですけど、今は中国の変化が大きいし、これからはこっちですね。

松:今は北京にいらっしゃる時間のほうが日本にいるときより長いですか?

方:長いですね。最初はビザの問題で長くいられなかったんですが、今は就業ビザを取ったので最長1年間連続でこちらに滞在できます。日本にはいい展覧会があったり、雑誌や本をまとめて見る必要があるときに帰ります。やはり日本の展覧会の質はいいし、資料性の高いカタログが出ますから。
ああ、来週くらいここでインスタレーションをやろうと思っているんです。クリスマスのころですね。まだ書架が埋まっていない状態で電気を全部消して、来る人にローソクをもってもらって撮影したり、照明を全部つけて撮影したりですね。そういうアートワークというかパーティを考えています。それが終われば日本に帰ろうと思ってます。お正月ですから。本を床下から出して並べるのはその後ですかね。

松:あー、なるほど面白そうですね。今日はありがとうございました。

方氏。書棚の前で




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