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劉:私たちの設計院はもともとは北京市紡績局の下部組織で、北京紡績工業設計院という組織でした。紡績関係の工業建築を主に設計していたんですが、紡績業自体の下火もあってあまりうまくいかず、85年から民用建築の設計に関わり始めました。90年代の末に名前を「維拓時代建築設計院」に変えて、これは英語の「victory star」の中国語への直訳ですが、再出発しました。その後株式制に移行してからは「有限公司」というふうに名前が変わったというわけです。
劉:北京院は大きくて歴史のある組織で、やはりいろんな情報が集まってきます。あそこで8年近く働くといろんな経験を積めます。ですから転職の機会も結構ありました。私くらいの経験者が転職するというのは、珍しいことではないと思いますよ。 プロジェクトのこと 松:「錦秋知春」は2000年から始まったと聞いていますから、劉さんがこちらの設計院に移られてからすぐこの仕事が始まったんですか? 劉:そうでした。 松:どうして、そもそもオーストラリアの設計事務所の計画がペキンで実現することになったんでしょう?最初その案を見てどう思われましたか? 劉:私も詳しくは知らないんですが、デヴェロッパーが香港の友人を通してCOXを紹介されたというようなことを聞きました。 彼らの案の特色は曲がった住棟平面です。ああいう曲線の住棟は、ペキンではたぶんこのプロジェクトが初めてだと思います。COXの案は外部緑地の配置など魅力的だと思いましたが、この曲線平面をどうやって各戸型に置き換えるかが当時の一番の問題でした。結局私たちは戸型設計において、各個室を四角に保って台形状のスペースでそれを繋ぐという風に曲線平面を翻案しました。もともとのオーストラリア側で作った戸型は、四角い部屋がなくてすべてが連続したような開放的なプランでした。しかし、これだと中国では売れないという見方がデヴェロッパーの中であり、我々の考えがそこで支持されたということになります。
劉:2000年の4−5月頃にデヴェロッパー、販売コンサルとの協働を始めたと記憶しています。まだこの時は契約関係にはなくて、サービスするような形で仕事をしていました。その時に私たちで簡単な戸型平面を作って施主に見せたところ、それが気に入られたんです。 2000年末にはクライアントとの正式な協働が始まりました。初歩設計に数ヶ月かけて、そのまま施工図設計まで進めました。COXの方案設計はとても概念性が高かった、つまりあんまり具体的なものではなかったので、施工図へ移行するための仕事量は膨大なものでした。他に外国の事務所と協働したケースと比較してもかなりの仕事量だったと記憶しています。 松:COXの仕事の進め方で、他の外国事務所と違う点がありましたか?協働の際の彼らの特徴は何だったでしょうか? 劉:彼らは立面をどう作るかに非常に意識を割いていましたね。平面というより立面。まあこれは各ユニットの平面は結局我々に作らせようと施主が考えていたこともあって彼らは立面に意識を向けざるを得なかった、という事情もあります。あとはそうですね・・・全体としてはCOXの方案設計は非常にラフなものでした。例えばドイツのGMPは方案設計の段階で非常に細かいところまで指定してきます。こうなると私たちもある意味やりやすいんですが、今回の場合かなりの部分で私たちが独自に進めた部分も大きかったです。 松:なるほど。こちらで引き継いだ初歩設計以降の仕事量がとても多かったと。 劉:特に初歩設計のあとの施工図設計の仕事量が多かったですね。そのこともあって工区をわけて設計施工しました。一度にすべての施工図を描くのではなく、まず1−2号棟の図面を描いてそれを施工しながらのこりの3−9号棟の施工図を描くということになったんです。 松:施工図製作段階でのオーストラリアとの関係はどのようなものでしたか? 劉:平面と整合のとれた立面図を描き終えた段階で、オーストラリアにそれをメールで送りました。それを向こうで出力して着色したものが送り返されてきました。彼らは図面の修整はしましたが、図面を新規に描くことはありませんでした。私たちもこの時期オーストラリアに1週間行って、向こうの人と直接打ち合わせをしてきました。その時やはり立面をどうするか、とくに立面の金属部分の詳細をどう作るか、ということを中心に打ち合わせたことを覚えています。最初に向こうから返って来た絵はガラスが多かったので、コストと断熱の面からそれを減らしたりするのでいろいろ調整しました。
劉:いや、そのへんの既製品のブランド選択については、デヴェロッパーが値段をみながら決めていました。 松:COX事務所はどれくらいの規模の組織なんでしょう? 劉:7−80人のスタッフがいる事務所で、シドニーのほか、メルボルンにも支部を構えていました。フィリップ・コックスをあわせて計3人のパートナーがいて、このプロジェクトは実質もう1人のフィリップ・グラウスが担当でした。彼の下にマレーシアからと中国からの移民のスタッフがいて、彼らと多くを打ち合わせました。
松:COX事務所は工事中は現場にどれくらい来ていたんでしょうか? 劉:概念設計を始める時は来たんじゃないですか?一番最初に現場を見に。後はオープニングの時にパートナーのクラウスさんが来てましたね。 松:直接こちらの事務所がCOXと連絡をとられていましたか?それとも契約関係がないとすると、連絡は全てデヴェロッパー経由ですか? 劉:最初はデヴェロッパーから連絡を取ってもらっていましたが、立面のやりとりなどは直接コンタクトしていました。 どこがオーストラリア? 松:この広告に使っている透視図ですが、最近はコンピュータ作図が一般的なのに敢えて手書きの図を使っているのは、やはりCOX事務所の意向だったんでしょうか? 劉:これはいつもCOX事務所がパースを製作してもらっている、オーストラリアのアーティストによるものです。敢えてこの絵を使いました。元になるコンピュータの図面はこちらから提供しているんですけどね。実はこの絵は少し敷地の長さを強調しています。そのままのスケールだとかなり上から覗き込まないと棟間の緑地が見えてこないので、少し比率をいじって緑地を強調しているんです。
松:あー、なるほど。先程1−2号棟の施工図を先に描いたと伺いましたが、施工の開始は・・・。 劉:2001年7月から主体工事部分の施工が始まりました。2002年7月には入居が始まりました。 松:他の住宅に比べて売れているようですね。この前モデルルームを見に行ったらほとんど空きもないし、地区の中にも比較的活気があったと思いました。 劉:戸型がいいので売れているようです。板状に近かった高層棟をL型に変えたのも良かったようです。高層棟はさらに私たちからの提案で2層ごとに吹き抜けの公共部分を作っています。これも効果があったようです。分譲価格平米9800元というのは今のペキンでは中高級クラスですが、売れ残っているのは200平米を超える大型住居部分だけです。低層部に一部そういうところがあります。高層部はかなり早く完売しました。 松:COXさんとはもちろんこれが初めての協働なんでしょうけれども、劉さんのところではこのデヴェロッパーとかつて一緒に仕事をされたことはあるんでしょうか? 劉:以前にも別の仕事があったようです。私は知らないですが。その後はまだ別の仕事はないですね。 松:ちなみに住宅面積18万平米のこの物件で、施工図設計の設計料はいくらくらいだったんでしょうか? 劉:契約の方は私はよくわからないんですよ。一般的な額だったと思います。設計料は今は色々ですね。平米40元というのもあるし、120元というのもあります。 松:建物についてなんですが、劉さんから見てこの住宅のどこが一番オーストラリア風だと思われますか?あるいはどこにオーストラリアの建築家がやった特徴が出ていると思われますか? 劉:それは立面の金属工事とか、ルーバー部分だと思います。シドニーではルーバーが当たり前のように多用されているし、そういうところがこの建築にも適用されていると思います。 松:屋根にも結構鉄骨が使われていますよね。細部の設計もしっかりしていると思って見ていたんですが、あの辺の細かな設計も設計院でコントロールされたんですか? 劉:鉄骨部分は広東省のファブがやっていまして、彼らが構造設計からジョイントの施工図まで描きましたが、こちらから最初に要望を出して今のようにできたんです。あちらに模型があるでしょう(と言って、部屋のロッカーの上におかれた模型を指差す)。あれは図面がある程度できた段階で我々自身で作ったスタディ用の模型です。立面が曲線でかつ凹凸も多かったので、ああいうものを作りながらどこに金属工事を入れるか検討したんでした。
劉:オーストラリアは室外機なんかないんですよ。空調をあまり使わないで、通風を確保するようにしているからなんでしょうか。その代わり、私たちから見ればルーバーなどの陽を避けながら風は通すという要素が発達している感じがしました。室外機置き場が必要というのはなかなか向こうに理解してもらえなかったようで、こっちで工夫したんです。立面はいろんな凹凸や金属工事との取り合いも複雑そうだったので、模型を作ってスタディしたりしました。立面の一部に穴をあけて建物を通り抜けられるようにもしました。これはマスタープランにも良かったみたいです。棟間の緑地どうしが連結されての相互の関係が強くなりましたから。 松:なるほど、気候の違いが建築の作り方にも当然反映されているわけですが、その辺の「翻訳」が大変だったということなんでしょう。今日はどうもありがとうございました。 |
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