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インタヴューの前に―北京で徳式生活
物件データ
インタヴュー1
インタヴュー2
インタヴューを終えて


インタヴューを終えて

2つのインタヴューからもわかるように、現在のペキンの民間デヴェロッパーの住宅は、マーケットの上では販売価格と建築の形式で5つに大別されていると言っていい。

1.販売単価平米5000元以下の普通住宅。中でも公共の資金支援もあって建てられる廉価住宅は、経済適用房と呼ばれ平均販売単価は3000元程度である
2.販売単価平米5000-8000元の中高級住宅
3.販売単価平米8000元以上の公萬
4.タウンハウス(接地した連結住宅、長屋形式)
5.別荘(セカンドハウスの意味はなく独棟住宅)

今回の「北京印象」は7800元なので、中高級住宅のなかでも高級に近い部類に含まれるものである。実際にモデルルームや劉夫妻の家を見た感じでは、それなりに細部もきちんとできているし、施工の水準は日本の一般的な民間マンションと比べても、そう遜色ないだろう。キッチンや水廻りの設備、外壁断熱材などはほとんど海外メーカーのシステムを丸ごと採用している。
 中国側の協働設計者のインタヴューを通してわかったのは、ドイツ風をうたってはいるけれどもドイツ側の設計への介入はかなり軽いものだった、ということである。広告戦略上ドイツ風を売りにしているから明言はされなかったが、事実としてドイツ側はビジネスの上でこの計画に関わったわけではない。そもそもステーデル氏がこの計画に関与したのも、デヴェロッパーからの依頼ではなく、ドイツ側と中国側設計者との個人的なつながりから始まっている、ということは見過ごせない。ほとんどの施工図は中国側がドイツの住宅写真を見て「学んだ」というから、「ドイツ人による設計」というよりは、「中国人によるドイツ風の設計」というのが正確なところだと思う。
 中国社会でも、「ドイツ」というと「正確」とか「信頼」というイメージで語られることが多い。シーメンスやフィリップスのようなドイツメーカーの工業製品も、信頼度の高いものとして受け入れられている。「フランス」や「イタリア」などが持つイメージとは明らかに違う意味作用があり、その意味では中国におけるドイツのイメージは日本におけるそれとそう違わないように思う。この住宅地区は実際にドイツ人が細かいところまで見て作られたわけではないけれども、中国人がちょっとしたヴォリュームや外壁を操作することで、ドイツのイメージを建物に効率よく定着させている。
 住人の劉夫妻のインタヴューでは、実際にこの住宅区の内部を見られたのだが、まだがらんとして生活臭のない感じだった。引っ越して4ヶ月だから無理もない。訪ねていったのは夜で、事務所で使われている住戸も多いからか、住宅区内全体が夜はあまり人気がないようにも感じられた。キッチンの配置の話ををしたときの印象が強く残っている。ガス台と流しが向かい合って配置されているのを、使いやすいかどうか奥様に尋ねたところ、彼女は「一列に並んでいるほうが使いやすいのよ」とこぼしたのだが、それを聞いたご主人は「それは慣れればいいだけのことで大きい問題ではない」と言い直していた。これを聞いて私は、奥様を味方につけて住宅の特徴をアピールするという日本の住宅販売の常套手段は、まだこの国では一般的にはなりえないかもなあ、と思ったものである。そういえば、不動産広告はマッチョにデザインを強調したり、舶来部材使用を強調した性能オタク的なものが多くて、非常に男性的な視点でしか作られていない気がする。日本のようなカリスマ主婦がいたり、収納アドバイザーが住宅の内装についてご意見番になったり、というようなことは、ここペキンではまだ想像もできない。大上段に構えた「コンセプト」で他と差異化することはあっても、細やかな使い勝手のよさや性能でじわじわとその利点を訴えるような住宅には、あまりお目にかかれないのである。住宅のマーケティングにおいては、男性的な視点が圧倒的に主流である。「徳式」という一言で、なにが実際にドイツ式が細かく規定せずに押し通すあたりが、今の中国不動産市場の勢いをそのまま象徴している感じがした。


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