アパート・マンションはハウスの仲間に入れてもらえない
ロンドンの雄大なテラスハウス
マンチェスター郊外のセミ・デタッチド・ハウス
 イギリスのハウスには3種類ある。デタッチド・ハウス(独立した一戸建住宅)、セミ・デタッチド・ハウス(2戸連続住宅、以下セミ)、テラス・ハウス(3戸以上連続住宅、以下テラス)である。そして、日本でアパートとかマンションとかいわれる縦に重なった住宅は、ハウスの仲間には入れてもらえず、フラットと呼ばれる。
 ハウスとフラットの一番の違いは、すべての住戸が地面に接して専用の庭をもつかどうかである。セミとテラスは一戸建住宅が横につながったものと考えられるから、すべての住宅が専用の庭をもつ。例えばロンドンには、4、5階建の雄大なテラスがたくさんある。それらはハウスだから縦に重なった住宅ではなく横につながった住宅である。つまり、地階から最上階まで細く縦に伸びた一軒の住宅が横に連続したものなのである。そしてかつては、地階は台所を中心とする使用人の仕事場、1階にはダイニングルーム、2階には応接間、3階以上には寝室、最上階の屋根裏には使用人の寝室、という具合いに階ごとの用途ははっきりと決まっていた。

つながっていても気分は一戸建て住宅
 割合でみると、イギリスの住宅全体の中で、一戸建てはわずか2割、セミとテラスがそれぞれ約3割、合計で6割も占めている。日本では、一戸建てが約6割を占めるのとは対照的である。日本にはセミとかテラスのような横に連続する住宅はほとんどない。アメリカや他のヨーロッパの国々と比べても、イギリスの連続住宅の多さは際立っているようだ。都市に人口が集中したとき、他の国では、アパート形式の住宅を造って対応しようとした。しかしイギリスでは、あくまで地面に接したテラス・ハウスという方法にこだわったのである。
 セミはテラスよりはるかに遅い20世紀の始めごろから、テラスに取って代わるように登場した。そして、テラス同様、投機的建設業者たちのご都合主義に乗っかって、あっという間に不動の地位を築いたのである。人気の理由は、テラスと同様、2棟別々に建てるよりは、コストが安上がりであること、外観もはるかに格好良く造れた事があげられる。 
 回りを見わたすとたくさん建っているセミを見て思うことは、「建て替えの時、どうするんだろ?」ということである。自分の方だけ半分壊すなんてできるはすがない。でも、イギリス人は全然そんなことは心配してない。なぜなら、住宅は永遠に保つ、と思っているから建て替えなんて考える必要がないのだ。実際、永遠に保つかどうかは別問題として、そのように考えられることは、ずいぶんと住宅に対する意識を変えているもんだ、と思うのである。